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得意を伸ばして自分らしく生きる 当事者から聞く大人の発達障害


最近では発達障害という言葉をよく耳にするものの、当事者は普段何に困っているのでしょうか。専門家にも話を伺いました。

得意を伸ばして自分らしく生きる どんな特性があるの?何に困っているの?当事者から聞く大人の発達障害

得意を伸ばして自分らしく生きる どんな特性があるの?何に困っているの?当事者から聞く大人の発達障害

 文部科学省の調査によると、全国にある小中学校で発達障害の可能性がある児童、生徒数は全体の約6.5%。大人も同程度だといわれています。最近では発達障害という言葉をよく耳にするものの、十数年前までは「変わった子」「わがままな子」と見過ごされてきました。当事者は普段何に困っているのでしょうか。
 今回は生きにくさを抱えながら成長し、大人になってから診断を受けた難波満さんと瑠璃真依子さんにインタビュー。専門家にも話を伺いました。

それぞれの障害の特性グラフ

※注:本文中に出てくる「アスペルガー症候群」「広汎性発達障害」は以前よく使われていた診断名。診断基準が改訂されたため、現在では自閉スペクトラム症と診断されることが多いようです

特性を知った上で仲良くしてほしい

 幼稚園の頃から耳が敏感という特性があり、ブザー音が嫌いでよく耳をふさいでいました。小学生の頃は、コミュニケーションの困難さが顕著になり、人との付き合い方が分からず、ずっと一人でいました。気持ちのコントロールも難しく、何かに我慢できなくなり、机をひっくり返してしまったつらい思い出もあります。高校卒業後、勤めた工場を解雇され、次の職場は人間関係でトラブルを起こして辞めました。

これがヘルプマークです。岡山市ではこれから配布が始まるようですが、まだまだ一般の認知が低く、もっと知られるようになったらうれしいです

難波満さん(39)
高等支援学校に勤務
岡山市在住

 初めて発達障害を疑ったのは、職探しで訪れたハローワーク職員の「発達障害じゃないの?」という一言でした。それから岡山障害者就業・生活支援センターに行き、紹介された心療内科で「アスペルガー症候群」と診断されました(※注)。平成23年には障害者手帳を取得。すでに30歳を過ぎていました。センターの紹介で、高等支援学校に就職することができました。屋内の清掃や花の世話、不定期に芝生の管理などをしています。

 生活で欠かせないのがスマホです。予定が乱れないようにカレンダーアプリを使い、スクリーンショットをメモや備忘録として使います。移動手段であるバスや電車の時刻表を使い、出発時間を忘れないためにアラームを使うこともあります。

 疲れている時はイヤーマフを使って、苦手な音を遮断するようにしています。できるだけ周りの人に迷惑をかけたくないと思っています。

 これまで独学で身に付けたのは、「たくさんのパターンを覚える」方法です。例えば、勤め先で来客が多い日が年に数回あります。突然来られるとびっくりしますが、玄関側から来るかも、下駄箱側から来るかも、と心づもりをしておくことで乗り切ることができます。

これだけはこらえてちょーでー

 苦手なことは、2つのことを同時に処理すること。冗談や暗黙の了解もよく分かりません。急な予定変更も苦手でパニックになります。変更があれば前もって教えてもらえると助かります。

 一番つらいのはコミュニケーションです。顔や名前をなかなか覚えられませんし、人の気持ちを察するのも難しいです。疲れると考える気力がなくなります。常に頭と神経を使っているので、疲れるペースが人と異なります。「疲れているのは皆同じじゃ」と言うのはやめてほしいです。

ひきこもってばかりじゃいけん

 「ひきこもりじゃいけん」と思い、ごみ拾いなどさまざまなイベントにも参加するようになりました。そこで出会った人たちとのつながりも大切なものです。人の輪に入ることで、自分の得意なことが見つかることもあります。得意なことを続けて力を伸ばしたら、自信につながります。私はそのときどきの気持ちを詩につづり、SNSで紹介しています。心が整理され、すっきりしますし、反応も励みになります。

 時にはしくじることもありますが、中には味方になってくれる人もいます。ひきこもってばかりじゃ何も起こりません。特別扱いはなくてもいいけれど、特性を知った上で仲良くしてほしいと思っています。

 外見では分からないけれど援助や配慮が必要な人が持つヘルプマークというものがあります。もしこのマークを持っている人が困っていたら、「どうしましたか」と優しく声をかけて、話を聞いてください。これだけで安心することができます。

2人の息子を子育て中です。特性は、いつまでも同じとは限りません。最近は、苦手な家事でもできることが増えてきました。

瑠璃真依子さん(32)
岡山高等学院講師
倉敷市在住

「どろだんご」「どろだんご2」表紙

文芸社から「どろだんご」(1000円+税)、昨年「どろだんご2」(1200円+税)を発刊。未来屋書店(イオンモール岡山内)、紀伊國屋書店(クレド岡山店)、喜久屋書店(イオンモール倉敷店)などで販売中

おもちゃの写真カード

箱に片付けられたおもちゃは「存在しないもの」と認識するため、おもちゃの写真を撮影し、裏にマジックテープを付けたカードを瑠璃さんが作成。遊びたいものがあれば、息子さんが自分でカードを取って持って来ます

壊れても壊れても何度でもやり直せる

 もし今生きにくさを抱えていて、「手伝って」と言える人が周りに一人でもいたら、助けを求めてください。失敗や挫折をしても、寄り添い、どうしたらいいか一緒に考えてくれる人がいたら、乗り越えていけます。

 経済的な支援や福祉サービスもあります。予定を入れ過ぎるとパニックになってしまうので、私は地域生活支援センターにスケジュールの立て方の見直しを依頼しています。また、苦手な掃除と料理は家事支援を受けています。信頼できる医師や支援者に話を聞いてもらうことも大切です。

 私の場合、寝食、水分補給すら忘れるほど過集中になる特性があります。疲れていることを自覚できないため、倒れるまで集中してしまう。味覚や聴覚、触覚が過敏で、体を締め付けるようなズボンやタイツをはくと、気分が悪くなり倒れてしまう。また、見えないものへの不安があり、人の気持ちをくみ取ることも苦手です。曖昧な表現が理解できず、理由や根拠を必死に探し、物事を理解してきました。

失敗や挫折を繰り返した青年期

 幼児期は書くことや歌うことが好きで、昆虫や収集が好きな女の子でした。小学生になると、女子グループに属せない、しゃべりすぎる、片付けられないなどの特性が現れ、「変わった子」と言われるようになりました。一方、一晩で円周率を百ケタ覚えるなど暗記が得意でした。

 不登校になりひきこもるようになった高校時代。「誰か私のことを分かって!」という思いが強く、家出やリストカットもしました。自分を含めた周囲が私の特性をまだ理解していなかったので苦しみました。

 それでも、学校へ戻れたのは、「数学の教師になる」という夢があったからです。保健室登校で少しずつ復学し、得意だった数学だけで受験。岡山大学理学部数学科に推薦入学することができました。この頃、適応障害や拒食症になり、大学内でカウンセリングを開始。「発達障害の疑いあり」と言われましたが、診断には至りませんでした。

 教員採用試験に合格し、中学で数学を教え始めるものの2年で休職。病気休暇中の24歳の時、「広汎性発達障害」「注意欠如多動症」と診断されました(※注)。復職プログラムを何度も受けましたが、とうとう教師には復帰できませんでした。

 1カ月の入院を経て、子どもの頃に憧れた酪農の世界に飛び込みました。半年間、酪農家の家に住み込みながら、さまざまなエピソードや自分の“取扱説明書”をまとめたエッセイ「どろだんご」を書き上げて出版。壊れても壊れても何度でもやり直せる、みんな輝くことができるという思いを込めてタイトルを付けました。

自分らしく生きる方法は必ずある

「交換ノート」の1ページめに書かれたルール

「交換ノート」の1ページめに書かれたルール

 やがてバスケットボールという共通の趣味を持つ男性と出会います。無口な彼に、「この人は何を考えているのか」と不安になり、専門家の勧めもあって彼と「交換ノート」を始めました。たくさん書く私に対し、数行返してくれるやりとりでしたが、相手のことが分かるようになりました。

 両家に認めてもらおうと、結婚を前提に1年同棲をしました。やっていけると確信したのは、同じ未来を見据えていると目で確認できたからです。スケジュール管理ができずパニックになった時、「死にたい」と泣く私に、とっさに彼が「死ぬまでにやりたいこと10個書いて」と言いました。それぞれが書いた内容に共通点が多く、やっぱりこの人と結婚したいと思い、平成26年に入籍しました。

 「みんなが自分らしくいてほしい」という思いで、岡山県発達障害者当事者会「どろだんごの会」を立ち上げました。会には、20代〜60代の当事者や保護者ら約30人が集まります。つらい時は寝ていてもいいし、ゲームをする、おしゃべりするなど思い思いに過ごせる居場所です。障害の特性は理解されにくいので、時には愚痴を言って、励ましあいます。自分らしく生きていくための方法は必ずあります。諦めないでください。

重松孝治先生

重松孝治先生
川崎医療短期大学 医療保育科 講師
大阪教育大学教育学部障害児教育専攻卒業。同大学院修士課程修了。
平成13年より大阪府立藤井寺養護学校(現大阪府立藤井寺支援学校)教諭。19年より川崎医療福祉大学・医療福祉学科講師、26年より現職。大学で教鞭をとる傍ら、各地で自閉症・発達障害支援の研修会講師、助言者を務める

専門家からのアドバイス得意を見つけて目標を持とう

 発達障害を抱える不登校児について、学校に行けない理由を考えながら、その対応方法を提案していくことも大事ですが、「学校に行けない時間をどう過ごすのか」にも注目してください。不登校でも、朝起きて家の用事をする、ボランティアに行くといった「自分が社会の中で役に立っていると感じられる」経験を積むことも大切です。

 大人の場合も、仕事に就くか、就かないかだけではなく、「人に喜ばれる経験をしているか」が大事です。以前、離職中の自閉症の人が、児童館で絵本の読み聞かせをして、とても喜ばれていました。そういった経験を積むことで、本人の自信につなげてほしいと考えています。

 発達障害の場合、周りは本人の苦手な部分をよく指摘しますが、そうではなくて得意な部分を見つけてください。得意な部分を認められるとその後の人生の支えになりますし、仕事につながるかもしれません。苦手部分は克服するためではなくて、あくまでもサポートを受けるために自覚しておく程度でいいのです。

二次障害が起きた場合は

 不登校やうつなどの二次障害を乗り越えるためには医療と福祉の両面からのサポートが必要。二次障害の原因となる発達障害の困難に対応するためには診断を受ける必要も出てくるでしょう。診断を受けることにちゅうちょする人もいると思いますが、当事者たちがよく言うのは、「診断を受けてはじめて、頑張り方が分かった」という言葉。苦手な部分が分かれば自分なりの解決方法を見つけていけます。

 ただ、二次障害の場合、「頑張ろう」と前向きな気持ちが削がれている状態なので、カウンセリングを十分した上で、障害ゆえに抱える生きにくさへの具体的な提案が必要です。実は方法はたくさん確立されています。

周囲の人はどう関わればいいの?

 周囲の人にお願いしたいのは、当事者の話にもっと耳を傾けてほしいということです。自閉症当事者の人たちが一番言われて嫌な言葉が「人の気持ちを考えなさい」だそうです。自閉症の人が人の気持ちを読むのが苦手であるというのはよく知られています。自分の行動が怒られるか、褒められるか常に分からない状況で生きている人がどれだけ不安か、ということを少し考えてほしい。周りは「どういう状況なのか、何を求められているか」と本人にその都度伝えてください。いつもうまくいかないとしても、「この人に聞けばいいのか」と当事者が思えば、そこで信頼関係を築くことができます。

 職場で違和感のある人がいたら、まずは「あなたのやり方は興味深いけれど、なぜそうするの?」と話を聞いてください。このステップを飛ばすと、否定されたと感じる人が多いです。それから、「このやり方しか分からない」と本人が言えば、「こういうやり方もありますよ」と叱責(しっせき)ではなく、優しく提案してほしいです。

 岡山県、岡山市、倉敷市、赤磐市などには「発達障害者支援センター」があります。ここは、当事者だけでなく、家族やパートナー、職場の人からの相談にも対応してくれます。特にパートナーの場合、家庭内の問題と思い、抱え込んで疲弊してしまうケースが多いです。「こういう人ならこういう言い方に変えてみては?」といった日常生活に関わる具体的なアドバイスや情報提供も受けられるので、ぜひ相談してみてください。

瑠璃さんと重松先生の話を直接聞いてみませんか

世界自閉症啓発デー記念講演会「私らしく生きる~ありのままを受け入れて」

日時 4月28日(土)13:30から
会場 きらめきプラザ大会議室(岡山市北区南方13-11)
13:40~14:50瑠璃真依子さんの講演
15:00~15:50瑠璃さんと重松孝治先生の対談
参加無料。要予約。定員200人
申し込み 電話、FAX、メールで4月20日(金)までに申し込みを。氏名、連絡先、立場(本人、家族、支援者、その他)を伝えること。
TEL=086(801)4010 NPO法人岡山県自閉症協会事務局
FAX=086(801)4030
メール= asj-okayama@kirameki-plz.com
主催 岡山県発達障害児・者の親の会連携協議会

「リビングおかやま」「リビングくらしき」2018年4月14日号掲載

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