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地域の子どもを地域で育てる 居場所でつながろう 子ども食堂編


地域の子どもを地域で育てたい…そんな思いが満ちている「子ども食堂」の輪が広がっています。

地域の子どもを地域で育てる 居場所でつながろう 子ども食堂編

 子どもの孤食をなくしたい、子どもの居場所をつくりたい、地域の子どもを地域で育てたい…そんな思いが満ちている「子ども食堂」の輪が広がっています。県内の子ども食堂に行って一緒にご飯を食べ、様子を取材してきました。

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東山つながりキッチン
親子参加率が高く、学区外からの参加も

東山つながりキッチンの様子

参加人数は、毎回40人~60人と大所帯。翌日学校が休みでゆっくりできるという理由で、金曜に設定

ある日のメニュー。さごしのソテー、さやいんげんの卵とじ、チンジャオロースーなど

ある日のメニュー。さごしのソテー、さやいんげんの卵とじ、チンジャオロースーなど

昼の調理

昼の調理が手薄なので、手伝ってくれる人を募集中です

 2年前の夏休みから東山公園集会所で毎月実施している「東山つながりキッチン」。主宰者の原明子(めいこ)さんに思いを尋ねてみると、「もともとは中高生の居場所づくりをしたかったんです」という答え。「でも、いきなり中高生とつながるのは難しくて。小学生のころからなら関係をつくりやすいので、今、子ども食堂に来ている小学生が中高生になるまで長丁場で続けられたらなあと考えています」。誰が来てもいい場にしたいという言葉通り、オープンな雰囲気。「楽しくやっていれば、いろんな人が、また気になる誰かを誘って来てくれると思うんです」と原さん。

 中心メンバーは地域のママたち15人。子どもたちも手伝いながら参加している姿が印象的です。幼児から高齢者まで、さまざまな世代が参加しています。「ごちゃごちゃな感じが子どもにとっては居心地がいい。初めはイベントをやったりして楽しませようとしていたけど、今は、参加者が勝手に出会って勝手に仲良くなっていっています」

 毎月参加しているという奥村奈々さんは「子どもが地域の大人と知り合う機会が少なくなっていますよね。私は県外出身。ここに参加することで、子どもも私も地域に顔見知りが増えました。暮らしていて安心感があります」と、この会を楽しみにしている様子でした。

原明子さん

原明子さん

【東山つながりキッチン】

◆日時:毎月第3金曜
 15:00からごはんを作る、遊ぶ
 18:00からごはんを食べる、片付け、遊ぶ
 20:00解散
◆会場
東山公園集会所(岡山市中区御成町15-26、東山公園内)
◆問い合わせ
 ☎080(3873)5626原さん
 メールmeikohara15@gmail.com
◆参加費
 子ども100円(幼児無料)、大人300円
 子どものみ参加する場合、20時までに保護者が迎えに来ること
◆次回の開催
 日時:9/21(金)
 参加希望者は前々日までに予約を
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さいさい子ども食堂
地域が一体となって西大寺学区の子どもを支援

さいさい子ども食堂の様子

特別養護老人ホームの一角。子どもだけで来ている子もいれば、親と一緒に来ている子も

カレーライス、サラダ、揚げもち、絹さやさっと煮

カレーライス、サラダ、揚げもち、絹さやさっと煮

 「ある日、夜遅くに子どもが公園にぽつんと一人でいて、声を掛けると家には誰もいないというひと言が返ってきたんです」。そんな出来事がきっかけとなり、地域の子どもの居場所をつくりたいと思った大人たちが相談。東区西大寺学区の有志が集まって2年前から「さいさい子ども食堂」を始動しました。

 元西大寺中学校校長の佐藤信治さんや、地域の役員を務めている那須真由美さんらが中心となって呼び掛け、特別養護老人ホーム「中野けんせいえん」で月1回開催しています。

 参加していた小学5年生女児は「土曜日、お母さんが仕事で家にいないから、チラシを見て来てみた。栄養満点でおいしい」。また、5人の幼子を育てている女性は「日曜は夫が家にいるからいいけど、土曜は子ども5人の世話をしながらお昼を作るだけでも大変。食後に遊べるコーナーもあって子どもも喜んでいます」と話します。

 町内会長、民生委員、市会議員など地域の人たちが肩書を背負わず個人的に参加しています。「来月はタマネギがとれるから持ってこようか?」「ぜひお願いします」というやり取りが行われるのを聞きながら、〝地域の一体感〟を感じました。

那須真由美さんと佐藤信治さん

那須真由美さんと佐藤信治さん

【さいさい子ども食堂】

◆日時:毎月第2土曜
 10:00~14:00
 ランチ11:00から
◆会場
特別養護老人ホーム中野けんせいえん(岡山市東区西大寺中野677-1)
◆問い合わせ
 ☎050(5241)2309
 メールsaisai_kds@yahoo.co.jp
◆参加費
 子ども無料、大人(16歳以上)300円
 主に西大寺地域の子どもが対象
◆次回の開催
 日時:9/8(土)
 参加希望者は問い合わせて予約を
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うのっこ食堂
小学校の敷地内で開催 学区で認められた子ども食堂

うのっこ食堂の様子

親子のケースは少なく、ほとんどが子どもだけで参加。この日は、子ども25人と大人16人。子どもの参加人数が多くなってきたため、月2回のうち、どちらかを選んでもらっています

ぶっかけうどん、かきあげ、漬物、スイカ

この日のメニューは、ぶっかけうどん、かきあげ、漬物、スイカ。きび長から寄付されたうどんを使用しました

ボランティア

「楽しくボランティアをする、がモットーです」

 「うのっこ食堂」の子どもたちはめっぽう元気。取材で訪れた日の外気温は38度にもかかわらず、夏ばてしている大人をよそに、走り回って遊んでいました。食事が始まると「100円でこんなに食べられるって、うれしい」とうどんをお代わりする子もいれば、「〝うのしょく〟には毎日でも来たいよ」という子も。あるボランティア女性は、「顔見知りになった子が、別の場所で会ったときに〝うのっこ食堂のおばちゃん〟と声を掛けてくれるんよ」と顔をほころばせます。親子で来ていた女性に声を掛けたところ「仕事から帰って急いで夕食を作る毎日。月に1回でもこんな日があるとうれしい」と参加理由を教えてくれました。

 会場は、宇野小学校体育館下のコミュニティハウス。宇野学区のコミュニティハウスがたまたま小学校の敷地内にあるので、うのっこ食堂を学校の敷地で開催できているのだとか。ほとんどが子どもだけで参加し、保護者は午後7時に迎えに来ます。学校内なので学童保育「うのクラブ」の子どもらも通いやすく、保護者も安心感があります。

 「学区全体から認められた子ども食堂というのも、うちの特徴ですね」と話すのは、会の中心的役割を果たす服部和博さん。子ども食堂を始める前に、宇野学区の連合町内会、コミュニティ協議会、社会福祉協議会、民生委員児童委員協議会、婦人会、愛育委員会、交通安全母の会などを回って趣旨を説明。学区内の多数の地域団体が、協賛団体として名前を連ねました。服部さん自身も宇野学区コミュニティ協議会会長です。

 もともとはコミュニティハウスでボランティアが実施していた「子どもの宿題教室」のメンバー数人が、「子ども食堂」をやりたいと言い出したことがきっかけ。うのっこ食堂会長の杉本美緒さんは「同じ地域に住んでいても異なる世代は接点がなくて、なかなか頼ることができません。月に2回ですが、子育てを終えた世代が、忙しいお母さんやお父さんを手伝いたいんです」と、思いを語ってくれました。

【うのっこ食堂】

◆日時:毎月第1・第3木曜(祝日休み)

 17:00~宿題をしたり遊んだりする
 18:00~食事
 19:00保護者がお迎え
◆会場
岡山市宇野コミュニティハウス(岡山市中区原尾島1-9-1、宇野小学校体育館下)
◆問い合わせ
 ☎090(2808)0160杉本さん
 メールmezase_nippon_no_haha_No.1@n.vodafone.ne.jp
◆参加費
 子ども100円、親300円
◆次回の開催
 日時:9/20(木)予約が必要
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水島こども食堂ミソラ♪
地元高校生や男性陣も食事作りのボランティアで活躍

水島こども食堂ミソラ♪の様子

この日は、子ども8人、高校生5人、大人16人。参加者の中には、真備町に連日、ボランティアに行っている人が何人もいて、被災地をどう支援するかの相談も行われました

スタッフが高校生らに料理を指導

スタッフが高校生らに料理を指導。「今回は一人でうさぎ型リンゴをむけた」と古中さん(右)

フードバンクから差し入れの巻きずしやおかずが届けられ、見た目も豪華に

フードバンクから差し入れの巻きずしやおかずが届けられ、見た目も豪華に

 〝自分の家族〟という枠を取り払って、ごはんを一緒に作る、一緒に食べるという団らんの場にしたい。単なる食事提供の場ではなく、困り事を相談してもらえる場をつくりたい。親戚のように支援したい…。そんな思いを共有するメンバーが、「水島こども食堂ミソラ♪」を開催しています。

 あるとき、シングルマザーとして子育てのしんどさを一人で抱えていた女性が、ここでごはんを食べた後、涙を流しながら心の内を打ち明けたことも。スタッフは静かに受け止めたそうです。

 女性スタッフもたくさんいますが、30代、40代の男性陣が事務局の中心を担っています。取材日も井上正貴さんの作ったゴーヤチャンプルーがおいしくて大人気でした。

 取材中、大量の巻きずしを持って現れたのが、フードバンクアリスの稲見圭紅さん。嵐のように立ち去る稲見さんに感謝しながら、その日のメニューを急きょ変更。巻きずしとそうめんが主食になりました。

 また、倉敷古城池高校の高校生がボランティアで参加。今回が3回目の参加という高校2年の古中拳太さんは、「初めて来たとき、ここの空気が気に入って毎回来るようになった。みんなで作って、みんなでいただきます、をして食べるのが家庭に近いと思う。料理も教えてもらえるし、いろいろな年代の人と話ができる」とうれしそう。高校生が中心になって子ども食堂を開催する回も予定しているそうです。

事務局長の都留芸さん、井上正貴さん、山下順子さん

左から、事務局長の都留芸さん、井上正貴さん、山下順子さん

【水島こども食堂ミソラ♪】

水島こども食堂ミソラ♪のぼり旗
◆日時:毎月第3土曜
 11:00オープン
 12:00から「いただきます」
 14:00ごろ終了
◆会場
さかえ町広場Tomoni(倉敷市水島西栄町4-23)
◆問い合わせ
 ☎086(445)1258倉敷医療生協労組・山下さん
◆参加費
 子ども無料(中学生以下)、大人300円
◆次回の開催
 日時:9/15(土)
 参加希望者は予約を。ボランティア、お米や野菜など食材提供を募集

子ども食堂という場が地域の新しい動きをつくり出す原動力に。
厚労省、文科省も連携を呼びかけ

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子どもの居場所連携事業に携わる直島克樹さんに、子ども食堂が誕生した社会背景、現状や意義について話を聞きました。

 大人も子どもも忙しく、ゆとりの時間を失い、地域において大人と子どもの出会う場が極端に減りました。幼児なら家と保育所の往復、小学生以上なら、学校、部活、塾と自宅の往復になって、大人と出会う場所や機会が少ないのが、今の子どもの現状です。子ども食堂は、大人と子どもが出会う、良い機会になっています。

 福祉を考えるとき、地域にそういう場があることがとても大事。子ども食堂という場は新しい動きをつくり出す地域の自発的発展のための原動力となります。

 厚労省は、今年6月末、各都道府県に対し、各自治体の福祉部局が積極的に子ども食堂と連携を図っていくよう求める通知を出しました。また文科省も通知を出し、教育委員会等も福祉部局と積極的に連携を取り、子ども食堂などの情報が行き渡るように促しました。全国に2200カ所以上あるとされる子ども食堂の広がりに対して、国も後押しをしています。

 岡山の子ども食堂は、県内の横のつながりを持っています。「こどもを主体とした地域づくりネットワークおかやま」で子ども食堂同士がつながり、お互いに情報や課題を共有しています。AMDAも子ども食堂を支援しようと、昨年、「AMDA子ども食堂支援プラットフォーム」を設立しました。県産米を希望団体に贈る取り組みがスタートし、今後もお米やお金を寄付する支援事業を行います。

 岡山ではフードバンクの活動も活発なので、食材を受け取っている子ども食堂も多くあります。さまざまな団体が協力し合い、継続して活動できるような仕組みづくりが始まっていると感じます。資金や人の確保が課題です。

 現在、誰でも来られるようオープンにしている子ども食堂がほとんどで、特定の子どもを支援しているところは県内に2カ所。「本当に困っている子が来ていない」という声を聞くこともありますが、ジャッジする場にならないようにしたいものです。困っているか困っていないかは、同じ状況でも家庭によって異なりますから。

 すべての子どもたちを地域で支えていくという当たり前を地域でつくっていくこと。顔を知っている、あいさつするという、ゆるいつながりをつくること。月1回でも長く関わり、その関わりを継続することが大切です。地域の居場所であるならば、地域が出資するという発想があってもいいのではないでしょうか。

 子育てや介護などをするとき、自己責任で家族が頑張る社会。家族がもっと力を付けるという発想ではなく、地域で支え合う社会を目指したいものです。

直島 克樹さん
直島 克樹さん川崎医療福祉大学医療福祉学部医療福祉学講師。社会福祉士。
「こどもを主体とした地域づくりネットワークおかやま」代表。子どもの居場所運営団体のネットワーク化、子どもの貧困の解決に向けた地域づくりを進めている

「リビングおかやま」「リビングくらしき」2018年9月8日号掲載

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