特集記事

食が人をつなぐフードバンクの挑戦


まだ食べられるのに廃棄されている食品を必要としている人につなぐ「フードバンク」活動が注目を集めています。

食が人をつなぐフードバンクの挑戦

 まだ食べられるのにいろいろな事情で廃棄されている「食品ロス」。それらを無償で提供してもらい、必要としている人につなぐ「フードバンク」活動が注目を集めています。次々に誕生する子ども食堂もフードバンクから食料を提供してもらうケースが増えています。6月は環境月間。食品ロスの現状を学びつつ、できることを考えてみましょう。

世界の食糧援助を上回る日本の食品ロス

 日本では、年間2842万tもの食品が捨てられており(平成27年度)、これは、食料消費全体の約3分の1にもあたるといわれています。この中には、まだ食べられるのに廃棄されている食品が含まれており、これを「食品ロス」「フードロス」と呼んでいます。

 平成27年度の食品ロスは、約646万t。国連WFP(世界食糧計画)による世界全体の食糧援助量である約320万tを大幅に上回る膨大な量を捨てているのです。

 内訳は、食品製造業・卸売業・小売業・外食産業から出る事業系のロスが約357万t、家庭系が289万t。家庭系も意外に多く出ているのが実態です。

※取材協力=中国四国農政局食品企業課

日本の食品ロスの状況 出典:農林水産省・環境省調べ(平成27年度)、WFP
日本の食品ロスの状況イラストグラフ

 ひと言でフードバンクといっても、各団体で特徴や活動内容が異なります。「フードバンク岡山」の糸山智栄さんと、「フードバンクアリス」代表の稲見圭紅(けいこ)さんにお聞きしました。

食べものを大切にすることは人を大切にすること

糸山智栄さん

フードバンク岡山
糸山智栄さん

「岡山・ホームレス支援きずな」で提供されている食事にも、フードバンク岡山からの食材が使われます(活動内容は記事後半で)

 フードバンク岡山の特徴は、①倉庫と事務所を持たない②情報共有とネットワークづくりをメーンにしている③SNSで調整してなるべく距離の短いところに提供。瞬時の判断をする④支援団体に提供し、個人には提供しない…などです。

 フードバンクを始めた早い段階から申し出があったのがおかやまコープ。出荷されずに残った野菜を、週5日、運搬ボランティアが交代で受け取りに行っています。届け先は、ホームレス支援団体、里親ファミリーホーム、子どもシェルターなど。たくさんの野菜を安定して供給できています。タイミングが合えば子ども食堂などにも提供します。

 食品ロス削減に積極的に取り組んでいる「ハローズ」とも提携。ただし、フードバンク岡山のボランティアが全店舗を回って回収するのは難しいので、地元の子ども食堂に直接受け取ってもらうよう紹介しています。

 この活動を通して実感しているのは、今までばらばらに地域活動をしていた人たちが、食べ物を介してどんどんつながっていること。何かしたいと思っている人が、食べ物にかかわることならできると動き始めています。子ども食堂やフードバンクは善意の受け皿になっていると感じます。

 ただ、フードバンクは、食品ロスの根本的な解決にはならないと私は思っています。大量に食品ロスが出続ける流通と小売りの仕組みの見直しや、消費者の賢い選択が求められます。「食べ物を大切にすること」は「人間を大切にすること」そのもの。だから食品ロスの削減は、人間を大切にする社会をつくることだと考えています。

フードバンク岡山ボランティアスタッフ山本真也さん

フードバンク岡山のスタッフは全員ボランティア。交代で運搬に奔走しています。写真は、京山公民館のフードドライブで食品を受け取った山本真也さん

提供してほしい食品

  • 穀類(米、麺類、小麦粉等)
  • 保存食品(缶詰、瓶詰等)
  • インスタント食品、レトルト食品
  • 調味料各種、食用油
  • 飲料(水、ジュース、コーヒー、紅茶等)
  • ふりかけ、お茶漬け、のり
  • 粉ミルク、離乳食
  • ギフトパック(お歳暮、お中元等)
  • 生活用品(ティッシュ、トイレットペーパー、 紙おむつ等)も受け付けています

食品に関するお願い

  1. 賞味期限が明記されているもの
  2. 賞味期限がまだ1カ月以上残っているもの
  3. 未開封であるもの
  4. 破損で中身が出ていないもの
  5. 米は常識の範囲内で古くないもの
    (冷暗所で保管されたもので虫がいないもの)
●フードバンク岡山の窓口
☎086(239)5303廃棄物工学研究所
info@fb-okayama.com

フードドライブって?

フードドライブ概念図

 フードロスが出るのは、生産や小売り過程からがほとんどと思いがちですが、実は、事業系と同じくらい家庭からも出ているのが実態。そこで消費者の私たちもできることとして注目されているのが「フードドライブ」。家庭から食品を提供してもらう拠点を設け、未開封のまま家庭に眠っている食品を集めて必要な団体に提供して活用します。京山公民館と足守公民館で月1回、フードドライブを開催中です。

フードドライブ受け入れ場所
(持参する前に事前に連絡を)

えくぼホームヘルパーステーション
岡山市北区岡町14-9岡町ビル202
☎090(7131)5672糸山さん

アベサイクル(7/15~ベアーズサイクルに名称変更)
岡山市南区福島3-6-36
☎086(262)0487

公民館のフードドライブ(月1回)

京山公民館1階美術工芸室
岡山市北区伊島町2-9-38
☎086(253)8302
次回は7月9日(月)10:00~12:00
足守公民館2階第1・2講座室
岡山市北区足守718
☎086(295)1942
次回は7月2日(月)10:00~12:00

ありがとうが連鎖する

フードバンクアリスの特徴はフットワークの軽さ。日用品も受け付けています。
稲見圭紅さん

フードバンクアリス
稲見圭紅さん

魚宗フーズののりが破れた巻きずし、いなり、ハゴロモの米飯工場から出る炊いたごはんなど、その日に食べないといけないものも引き受けています。写真は、倉敷で開催された「ノーマライゼーションカフェ」で巻きずしを分けているところ

 私は長年、食品の廃棄物を減らす活動をしてきました。これまで2tトラック1杯分の豆腐や、11tトラック1杯分の冷凍あんこが捨てられる現場をこの目で見てきて、事業系ごみが減らないジレンマを感じてきました。そこで2017年9月、「フードバンクアリス」を立ち上げたのです。

 フードバンクアリスの特徴は、今日の賞味期限なら全部引き受けること。包装や賞味期限などで販売基準を満たさないためにスーパーマーケットや食品会社で処分されてしまう食品を引き取っています。スーパーに受け取りに行って「ありがとう」と言われ、取りに来てくれる人も「ありがとう」と言われる。「食べてくれてありがとう」と私たちも言う。どこに行っても「ありがとう」の連鎖です。

 障害者の就労継続支援A型事業所を運営しているおかげで、スタッフの協力が得られ、倉庫もあります。ハローズ8店舗にほぼ毎日受け取りに行っているほか、両備ストア7店舗、天満屋ストア3店舗、山陽マルナカ25店舗、ニシナには月1回、山崎製パンには週に1回行っています。なるべくみんなの動きが最小になるようにルートを考えて動くようにしています。

 届けるのは、地元のこども食堂ミソラ、児童養護施設、障害者施設、地域の老人会など。一方では大量に捨てていて、一方では困っている人がいる。両者をつなげられるのがフードバンクだと実感しています。

 また、2カ月に1度、遍照(へんじょう)院というお寺で「無料ストア」を開催することにしました。「寄付したい」という人からの食品を受け付け、必要な人が受け取る「無料ストア」。大原英揮住職の「もったいない」という話を聞いたあとで分けるので、みんな気持ちよくシェアできています。

 消費者も買い物行動を見直す必要があります。スーパーで棚の奥から商品を取る人が多いため、手前の食品は売れ残りやすい傾向があり、期限切れの在庫がフードロスの原因の一つになっています。今日食べるのなら今日の賞味期限のものでいいですよね。買ってすぐ食べるなら、3割引き、半額など割引シールのついている商品を買ってほしいです。

フードバンクアリスに集まった食品

フードバンクアリスに集まった食品を、日付け順に仕分けしていきます。寄付された食品は、重量を量るようにしています。4月は4t、5月は5tを超えました

引き取りできる食品

  • 原則として、内包装が破れておらず、消費期限・賞味期限が確認できて、期限内のもの。
  • メーカー生産終了、パッケージリニューアル、季節商品などで余剰になったもの
  • 缶のへこみ、外包装破れ、パッケージ汚れなど、期限は残っているのに売り物にならない商品。
  • お菓子、インスタント麺、料理の素、調味料など
  • 酒類も期限が残っていれば引き取り可能

引き取りできない食品

  • 生魚、生肉等の生鮮食品
  • 内袋が破れているもの
  • 消費期限、賞味期限が切れているもの
  • 手作り食品
●フードバンクアリス
倉敷市広江5-2-45 アリス福祉会
☎086(436)6603

第2回西阿知ふれあい広場「無料ストア」

日時:6月30日(土)
会場:神遊山遍照院客殿(倉敷市西阿知町464)
第1部
13:00~14:00仏事・終活・相続など相談会
第2部
14:00~15:00環境問題「フードロス」
主催=フードバンクアリス
予約不要。開始後14:10以降の入場不可。食品配布の袋は主催者で用意したものを使用。次回は8/26(日)

私たちにできることを考えよう

出典:農林水産省「食品ロスの削減に向けて」

賞味期限と消費期限の違いを理解する

 賞味期限と消費期限は異なります。食品の特徴によってどちらかが付けられ、お弁当など劣化しやすいものには安全に食べられる期限として「消費期限」が、長くもつものには「おいしく食べられる期限」として「賞味期限」がついています。賞味期限を過ぎてすぐに食べられなくなるわけではないのです。

※賞味期限を過ぎたものを食べる時は、経過日数だけでなく見た目や臭いなどで個別に判断しましょう

出典:農林水産省HPより

棚の手前の食品から手に取る

 消費・賞味期限が近いもの、棚の手前の食品は売れ残りやすい傾向があります。期限が切れて売れ残った食品は、廃棄されて食品ロスとなってしまうことがほとんどです。こうした期限切れの在庫は、事業系における食品ロスの原因の一つになっています。購入後すぐ食べるものであれば、棚に並んでいる食品の中に数日の違いがあってもあまり気にせず、期限の近いものから取ることを習慣にしてみませんか。

出典:農林水産省平成27年度食品ロス統計調査報告(外食調査)

宴会の食べ残しを減らす3010運動

 外食産業で発生する食品ロス約133万トンは、国内全体の食品ロスの約5分の1に相当。食品ロス削減に取り組む地方自治体が増えており、食べ切りの促進や料理の持ち帰りの呼びかけも行われています。その一つが、宴会で食べ残しを減らす「3010運動」。「乾杯後、30分は席を立たずに料理を楽しみましょう。お開き10分前になったら席に戻って料理を楽しみましょう。食べ切れなかったら仲間と分け合いましょう」と呼びかけ、宴会で食べ切りタイムを設ける取り組み。宴会で実践してみませんか。

「やり直したいと思った人がやり直せる社会に」

岡山・ホームレス支援きずな


スタッフは全員ボランティア。この日の献立は、ごはん、みそ汁、ギョーザ、チンゲン菜のごまあえ

 フードバンクの食材を活用しているという「岡山・ホームレス支援きずな」。火曜の昼食や日曜の炊き出しなど、定期的に食事を提供しています。火曜の会に出掛けてみると、その日の参加者は、ホームレス状態の当事者、元当事者、地域の高齢者、スタッフなど合わせて30人。一つのテーマで一人一人話をした後、みんなで食卓を囲みました。「ここで支援を受けていた人が、生活保護を受けたり、仕事を始めたりしてだんだん自立していく。そして今度は支える側に回っていきます。収入を得た当日に、夜回りで配るラーメンをたくさん買ってくる人もいます」とスタッフの豊田佳菜枝さん。

 夜回りしてチラシを渡している数は約30人。「自己責任」という言葉を簡単に使う人が多いですが、貧困だけでなく、病気、障害、介護、DVなど、さまざまな事情や問題を抱えています。路上にいるという時点で、孤立無援の状態。本人の努力プラス周囲の支援が必要です。やり直したいと思ったときに、やり直せる社会であるべきです」

ホームレスは住まいや金銭の物理的困窮だけでなく、人間関係の困窮も含まれると考えています。ここが人とつながる居場所になればと思って活動しています。

きずなスタッフの豊田佳菜枝さん

【活動内容】

◆火曜の会…毎週火曜10:00~、野宿当事者、元当事者、地域の単身高齢者、障害者、スタッフが集まり、一つのテーマで話し合う。昼食も提供(無料)。
◆モーニング…毎週土曜9:00~11:00、誰でもウェルカムの朝ごはんを食べる会。収入のある人は実費として200円、ない人は無料。
◆炊き出し…毎週日曜16:00~生活困窮者を対象に、食事を提供。入浴、洗濯も可。
◎火曜の会・モーニング・炊き出しの場所:安楽亭(岡山市北区奥田本町2-6)
◆夜回り…毎週木曜深夜、岡山駅地下街を中心に、野宿当事者への声かけ、相談。配布食を持参し、安楽亭について伝える。

◆寄付の受け付け

 食料・日用品の寄付(洗剤、ラップ、トイレットペーパー)を受け付け。夏物のTシャツなども
問い合わせ☎086(221)2822事務局

54歳男性、当事者の話
 「以前はひと月200時間以上の残業をしていたほど仕事仕事の人生。いろいろなことが嫌になり、県外から岡山にきてホームレスになった。一番街にいたら夜回りで声をかけられ、初めは無視していたが、仲間も行っているというので来るように。おなかいっぱいになったら心は穏やかになり、お風呂に入れば気持ちがよくなる。今は時々アルバイトしている。もしここに来なかったらどうなっていたか分からない」

「リビングおかやま」「リビングくらしき」2018年6月16日号掲載

ページトップ