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老い支度、それは高齢者がするものと思っていませんか?


人生のしまい方を自ら考えて準備する、老い支度。老い支度のスペシャリストに話を聞きました。

老い支度、それは高齢者がするものと思っていませんか?

 人生のしまい方を自ら考えて準備する、老い支度。
「それは年齢に関係なく、気になったときが始め時です」と話す、
老い支度のスペシャリスト・竹裏由佳さんに話を聞きました。

イメージイラスト
竹裏さん

この人に
聞きました

竹裏(ちくり)由佳さん

終活カウンセラー上級インストラクター、整理収納アドバイザー2級認定講師、遺品整理士などの資格を生かし、各種セミナーや講座などで活躍中

家族には頼れない、頼りたくない 高まる老い支度への関心

 少子高齢社会といわれて久しい昨今。さらに、離婚や再婚などで家族関係が複雑化したり、高齢者だけの世帯(単身、夫婦のみ)が増加したり…。家族の在り方が多様化する中、高齢者の介護から死に至るまでの終末期を、家族だけでは担いきれない状況が生じてきています。

 子どもには負担をかけたくないと考える高齢者も増えているなど、価値観や意識の変化も一因に。老後を誰とどこでどう生き、どう逝くかを選択し、そのためにどう備えるかを考える、老い支度への関心が高まっています。

老いてからでは難しい 自分を尊重し、家族を慈しむ活動

 「老い支度とはこれからの生活で気がかりは何かを考え、それを解決する手段を見つけ、元気なうちに実行していくこと」と竹裏さん。

 具体的な老い支度の例(下記のチェックリスト)を挙げ、「時間だけでなく、気力、体力、判断力が必要です。老いてからではできないこともあるので、元気な“今”からスタートを。早く始め過ぎたと後悔することはないはずです」。

 生きている間に必要な医療や介護への備え、旅立ちと死後への備え。3つの備えが必要な老い支度。備えあれば憂いなし︱。自分らしい最期を迎えるために今、自分で未来の選択をしておけば、残りの人生を前向きに生きられるだけでなく、家族の負担を軽減することにも。老い支度は自分自身を大切にし、家族や周囲の人たちを思いやる活動といえそうです。竹裏さんは「前向きな活動なので一人で取り組むより、家族や友人を巻き込んでその過程を楽しんでほしい」と話します。

老い支度の心構え
その1 気力、体力、判断力があるうちに始めよう
その2 家族や友人を巻き込んでその過程を楽しもう
その3 エンディングノートを書いて思いを伝えよう
チェックリストで確認!どんなことをすればいいの?決めればいいの?

 基本的な老い支度を3つのテーマに分けて紹介します。一人で考えて決めるのではなく、家族とよく話し合い、思いを共有しておくことが大切。チェックリストの内容を中心にまとめたものがエンディングノートです。

終末期医療や介護を考える
  • □病名や余命の告知について
  • □延命処置(人工呼吸器の装着など)について
  • □臓器提供、献体について(免許証や健康保険証の裏面をチェック)
  • □介護やみとりについて
  • □制度やサービスを知り、知識を身に付ける
  • □医療や介護の費用はどうするか
残す物を考える
  • □住まいを片付ける。不動産はどうするか
  • □資産(金融・実物資産)を整理する
  • □遺言書について
  • □貴重品を「処分する物」「相続として残す物」などに仕分けする
旅立ちを考える
  • □葬儀について
  • □遺影について
  • □埋葬(墓)、法要について
  • □訃報を伝えてほしい人をリストアップし、連絡先をまとめる
  • □葬儀や墓の費用をどうするか
知恵と工夫で楽しく、賢く!今すぐ始める老い支度

 子どもたちが巣立ち、そろそろ老い支度が気になりだしたという、リビング読者の村井祐子さん。凛(りん)として人生を終えるために、今すぐできることを竹裏さんにアドバイスしてもらいました。

村井さん

 願ってかなうのなら、PPK(ピンピンコロリ)と逝きたいですが、家族の世話になるかもしれません。できるだけ負担をかけないようにするには、どんな“支度”が必要ですか?

リビング読者 村井祐子さん(60)

身辺整理

 遺品整理は思う以上に時間もお金もかかるので、“遺品”になる前に自分で処分。気が向いたときに不用品を“間引き”する方法で、少しずつ進めるのがコツです。押し入れを占領している客布団や座布団、棚に並んでいるだけの食器はありませんか。衣替えのときには衣類を見直す習慣を。デジタルデータの処分方法やペットの行く末なども考えておきましょう。

 暮らしの質を落とすのではなく、ライフスタイルの変化に合わせ、サイズダウンすることが大切です。一方で、しまい込んでいるとっておきの洋服や食器を普段使いにして、暮らしを心豊かに。

一気にやろうとするから、腰が重くなるのね!

 3人に1人が男性介護者という時代。整理整頓された住まいなら、男性も家事や介護に参加しやすくなります。

お金の整理

 高齢になるほど、金銭を管理できなくなる人が増加します。今のうちに利用頻度の少ない口座を解約して通帳を1~2冊にまとめ、印鑑も整理しましょう。通帳1冊で入・出金の流れが“見える化”できれば、1年間に必要な生活費の目安がつきます。エンディングノートに預貯金や株式、保険、負債など、財産情報をまとめたページを作り、定期的に更新しておくと、相続や成年後見の場合もスムーズに進みます。

もう遅いかしら…老後の資金計画。早く知りたかったわ!

 家のリフォームや旅行、子どもや孫への資金援助など、老後にしたいことを現役のうちからイメージし、資金計画を立てることも大切です。早く準備を始めるほど、対策が立てやすいです。

おひとりさまへの備え

 家族がいても、いつか一人暮らしになる可能性は誰にもあります。老後の一人暮らしをサポートしてくれる制度やサービス(※)についての知識を身に付けておきましょう。施設への住み替えも視野に。元気なうちに見学会に出掛け、施設の雰囲気や職員の様子をチェック。友人や家族と協力して効率よく情報収集し、集めた情報を共有しましょう。老後の一人暮らしのキモは自立と人間関係のネットワーク。健康保持を心がけ、「ご近所」「地域」の視点で支え合えるよう、人間関係を見つめ直すことが必要です。

女性はネットワークがありそうだけど、退職後の男性は…。

 ※介護保険制度、認知症サポーター、在宅医療、訪問看護、成年後見制度、緩和ケア対応の医療機関や施設、見守りサービス、個配、弁当サービスなどの情報を集めましょう

老い支度にもコツがあるのですね!

 老い支度をするにはまだ早いと思っていましたが、竹裏さんのお話に得心しました。エンディングノートのアイデアも新鮮。肩肘張らず、私にも書けそうです。老い支度のコツは家族や友人と情報交換しながら楽しむこととか。この情報を友人に伝えます。 (村井さん)

高齢者が情報難民にならないように

 現代社会は人とのつながりが希薄な上、多種多様な情報が氾濫。高齢者が自分に必要な情報を取捨選択して行動することは、たやすくありません。これからは個人による備えはもちろん、老いや死を地域で支え合える仕組みづくりが望まれます。 (竹裏さん)

エンディングノート

これなら簡単!竹裏さん流エンディングノート

 竹裏さんが提案するのは市販のポケットファイルを利用したものです。例えば、インターネットから無料ダウンロードできるエンディングノートをプリントアウトし、記入したページを次々とファイルのポケットへ。「写真なども入れて楽しく」と竹裏さん。「好きな食べ物や特技などの情報は介護者との話題づくりに役立ちます」。エンディングノートは気持ちや状況の変化に応じて書き直すのが前提。ファイル方式なら何度でも書き直して差し替えることができます。

「リビングおかやま」「リビングくらしき」2017年7月1日号掲載

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