特集記事
給食×食育 おいしく学べるイマドキの学校給食
現在の小学校の給食現場をのぞいてみると、郷土料理、地場産物を知る機会となり生きた教材として活用されています。
苦手な食べ物がある子どもたちにとっても楽しく学べる今どきの給食とはー。
「毎日昼が楽しみで仕方なかった」「苦手なものが出ると辛かった」「完食するまで椅子に座らされていた」―。数十年前の給食の思い出はさまざま。
現在の小学校の給食現場をのぞいてみると、郷土料理を食べたり、地場産物を知る機会となり、生きた教材として活用されています。
苦手な食べ物がある子どもたちにとっても楽しく学べる今どきの給食とはー。
楽しいメニューで苦手食材を克服、給食残量も大幅減
岡山市立桃丘小学校

この日の給食メニューは、カレーライスと甘夏サラダ、牛乳。
岡山市立桃丘小学校3年生の給食の時間

人気メニューの手作りピザトースト。ピーマンやキノコが苦手な子どもも、これなら食べられるそう

季節を感じながら校庭で食べる「お弁当給食」
給食を校庭などでも食べられる簡易容器に詰めた「お弁当給食」、手作りのコロッケやピザ、メイン料理を子ども自身が決められるセレクト給食…。岡山市内で実施している週1回の自由献立の日は、工夫満載のメニューが登場する岡山市立桃丘小学校。230食という小規模校の良さを活かして、手作りを心掛けた献立を考えるのは、栄養教諭の塩﨑恵子先生です。
小学生の間に食に興味を持ってもらいたいーそんな思いから作られる給食は、子どもたちが楽しみになるようなメニューの中にも、ピーマン、キノコなど、苦手食材の克服へつながる工夫がなされています。
また、「給食の時間に教室を周り、子どもたちが食べている様子を見たり、食にまつわるアドバイスをしたりすることで、子どもたちは〝給食を作ってくれている人が来た! 残さず食べなきゃ〟という気持ちになり、給食の残量が大幅に減りました」と話します。
さらに同校では、台所に立つ子どもが増えるようにと、栄養教諭が地域の栄養委員などと連携して、夏休みや冬休みに料理教室を実施。「子どもたちには、自分で食べるものは自分で作れるような大人になってもらいたいですね。料理は愛情が伝わりやすいものです。大人になって誰かのために料理が作れたら素晴らしいと思いませんか」と塩﨑先生。
今年度から、小学2年生は「やさいとなかよしになろう」、6年生は「バランスのよいこんだてを考えよう」など、岡山市内の小・中学校では、各学年でテーマを設けた〝食に関するカリキュラム〟が導入されることになりました。「子どもたちが学校で食について学ぶことで、保護者が家庭での食事について考えるきっかけにもなっていると保護者から聞いています」と塩﨑先生。
小学生の間に食べることが好きな子どもになって!
料理教室で台所に立つことを覚えて、大人になって、料理で愛情表現ができれば素晴らしいですね。

栄養教諭
塩﨑恵子さん
栄養教諭…小学校、中学校などに置かれ、児童・生徒への食に関する指導と給食の管理を行う教諭。県内では157人の栄養教諭が活躍中
ヘルスジャッジを活用することで〝食〟に対する意識が変化
倉敷市立長尾小学校

この日のメニューは、かやくうどん、青菜としめじのおひたし、黒糖ビーンズ、牛乳。
倉敷市立長尾小学校3年生の給食の時間

「くらしき市版ヘルスジャッジ」の結果表の一部。倉敷市では、平成23年4月から、市内すべての小学校でヘルスジャッジを導入。家庭での食事内容はもちろん、コンビニで買って食べたものやファストフードなども入力でき、上のような結果表が出てきます
「ニンジンは目が良くなるよ。玉ネギを食べるとお肌がツルツルになるよ」と、担任の先生がおかずの容器を持って声を掛けると、「ハイ!」「ハイ!」と、お代わりの手が挙がる楽しい給食の時間。
倉敷市立長尾小学校では、「ヘルスジャッジ」を使った食育を積極的に取り入れています。ヘルスジャッジとは、倉敷市内のすべての小学校で導入されているもので、食べた食事内容を子どもたちがインターネット上で入力すると、栄養バランスが良いかどうかが、ひと目で分かるシステムです。
高学年で栄養素について学ぶ際、栄養素名と、どんな食べ物に何の栄養素が多く含まれているのかを結び付けられない子どもが多いのが現実。「ヘルスジャッジを使うことで、果物を食べるとビタミンが摂れる、自分の食事に足りていない栄養素は何か、だから何を食べるべきかが分かるようになります」と三原実穂先生。「結果表を家に持ち帰ることで、家庭での食事を見直したり、食にまつわる会話のきっかけに結び付いたりして、子どもたちの好き嫌いや、食に対する考え方が変化してきているのを実感しています」と続けます。
同校では、低学年で給食の材料の下ごしらえをしたり、中学年で朝ごはん日記を書いたり、生活と密着した楽しい取り組みを授業や給食の時間に取り入れたりしています。「学校での経験を通じて、健康でいるためにどんな食事をするべきかが考えられるようになってほしいですね」と三原先生。
好き嫌いなく食べることで、健康になれる。健康でいるためには、どんな食事を摂るべきかを、自分で判断できるようになってほしい。

栄養教諭
三原実穂さん
地場産物の使用は57.3%〝給食は、生きた教材〟
子どもたちが毎日食べている給食のメニューを知っていても、それらの食材の産地までは知らない親御さんが多いようです。内閣府が目標値と掲げている「学校給食における地場産物を使用する割合の目標値」30%に対し、岡山県では、平成27年度は、57.3%地場産物が取り入れられていました。平成26年度の全国平均26.9%に比べて高い数値となっていることが分かります。また、県内では平成18年度の36.0%から、10年で約20%地場産物の使用が増えています。
「学校給食に地場産物を取り入れることで、郷土料理を知るきっかけとなり、子どもたちが岡山への愛着を深めたり、生産者へ感謝の気持ちを育んだりする指導にもつながっています」と、県教育庁・保健体育課。
家庭でも給食の味を再現してみませんか。栄養教諭に、自宅で作ってもらいたい給食メニュー、子どもたちに伝えたい岡山の料理を教えてもらいました。これらのメニューにもママカリや千両ナス、タケノコ、コボウなど、たくさんの地場産物が使われています。

マーボー豆腐
給食の人気定番メニュー。
〝素〟を使わなくても家庭にある調味料で手軽に作れます
<メニュー>
●マーボー豆腐 ●ひじきの中華あえ ●ごはん ●いよかん ●牛乳
<材料>4人分
豆腐 | 1丁 | ||
---|---|---|---|
合いびきミンチ | 100g | ||
サラダ油 | 適量 | ||
ニンニク | 1かけ | ||
ショウガ | 1かけ | ||
ニンジン | 1/3本 | ||
玉ネギ | 1/2個 | ||
タケノコ | 小1個 | ||
シイタケ | 2枚 | ||
ネギ | 3本 | ||
砂糖 | 小さじ1 | A | |
オイスターソース | 少々 | ||
しょうゆ | 小さじ1 | ||
トウバンジャン | 適量 | ||
赤みそ | 大さじ2 | ||
片栗粉 | 適量 |
※調味料は各家庭で調整を
<作り方>
- ニンニク、ショウガはすり下ろす。ニンジン、玉ネギ、タケノコはみじん切りにし、シイタケは石づきを落とし、粗みじんにしておく。ネギは1㎝の小口切りにする
- 豆腐は水切りして、さいの目切りにしたものを3分程度ゆでる
- フライパンにサラダ油を熱し、ニンニク、ショウガ、合いびきミンチを炒める。肉の色が変わり、火が通ったら、ネギ以外の野菜も加えてよく炒める
- Aの調味料を100㏄程度の水で溶き、3.に加える。沸騰したら、2.の豆腐とネギを入れて、水溶き片栗粉でとろみを付けて仕上げる

夏けんちん
夏野菜をたっぷり使った、さっぱりといただける汁物です
<メニュー>
●夏けんちん ●すずきの塩焼き ●いんげんのごまあえ
●ごはん ●牛乳
<材料>4人分
木綿豆腐 | 80g | ||
---|---|---|---|
ナス | 1/2本 | ||
カボチャ | 40g | ||
ダイコン | 40g | ||
こんにゃく | 1/4枚 | ||
油揚げ | 1/2枚 | ||
ネギ | 20g | ||
ごま油 | 小さじ1 | ||
塩 | 少々 | A | |
しょうゆ | 大さじ1 | ||
みりん | 小さじ1 | ||
かつお節 | 15g | B | |
水 | カップ3 |
<作り方>
- ナスは半月切り、カボチャ、ダイコンはいちょう切り、ネギは小口切りにする。こんにゃくは下ゆでし、油揚げは油抜きした後、短冊切りにする。豆腐は手で粗くつぶして、ザルで水気を切っておく
- Bでだしを取っておく
- 鍋にごま油を敷き、水気を絞った豆腐を炒める
- 3.にナス、ダイコン、こんにゃくを加えて炒め、Bのだしを入れ、沸騰したらカボチャと油揚げを入れる
- 野菜に火が通ったらAとネギを加えて仕上げる

写真は昨年のもの
ままかりの南蛮漬け
6月1日の「岡山市民の日」にちなみ、
5月下旬~6月上旬ごろの岡山市内の学校給食に登場予定
<メニュー>
●ままかりの南蛮漬け ●千両なすのみそ汁 ●ごはん
●みかん ●牛乳
<材料>5人分
ママカリ | 125g | ||
---|---|---|---|
酒 | 小さじ1/2 | ||
塩・コショウ | 少々 | ||
片栗粉 | 大さじ2 | ||
揚げ油 | 適量 | ||
ニンジン | 10g | ||
玉ネギ | 25g | ||
砂糖 | 小さじ1 | A | |
酢 | 大さじ1 | ||
しょうゆ | 大さじ1 | ||
一味とうがらし | 少々 |
<作り方>
- ママカリは、うろこを落とし、頭と内臓を取り、流水で洗い、キッチンペーパーで水分を取る。酒・塩・コショウで下味を付け、片栗粉をまぶし、油で揚げる
- ニンジンは細い千切り、玉ネギは薄くスライスする
- Aを合わせ、2.の野菜を加えて軽く煮る
- 油で揚げたママカリに3.をかける
※南蛮漬けのタレは、少ない場合、同量の割り合いで増やしてOK
※ママカリが熱いうちにタレを掛けると、味がしっかり付き、骨も軟らかくなって丸ごと食べられます
「リビングおかやま」「リビングくらしき」2016年5月21日号掲載