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新年度の健康診断に向けて知っておきたい若年性乳がんの疑問 最新情報にアップデート


ネガティブなイメージが先行されがちですが、医療の進歩で希望も生まれています。最新情報を知っておきませんか。

新年度の健康診断に向けて知っておきたい若年性乳がんの疑問 最新情報にアップデート

土井原先生

話を伺ったのは

岡山大学病院
乳腺・内分泌外科/教授

土井原 博義先生

 今や日本人女性のがん罹患率トップの「乳がん」。その中でも、著名人の罹患などで最近よく耳にするのが「若年性乳がん」です。乳房切除や妊娠・出産が難しいなど、女性にとってネガティブなイメージが先行されがちですが医療の進歩で希望も生まれています。最新情報を知っておきませんか。

女性がかかるがんのトップは乳がん
早期発見と適切な処置で5年生存率は90%

 乳がんとは、遺伝子が変異し乳房の中にある母乳を運ぶ「乳管」で、細胞ががん化することをいいます。

 罹患数は年々増加。2016年の罹患数は、約9万人(注1)と予測され、これは女性の部位別がん罹患数ではトップです。しかし、早期発見し、適切な処置を受ければ、5年生存率が約90%(注2)と、克服できる可能性が高いのも特徴です。

 主な要因として、早期初経・閉経が遅い・出産未経験・高齢出産などの女性ホルモン分泌との関係、アルコール・喫煙、動物性脂肪の過剰摂取・高カロリーな食生活、肥満(閉経後のBMI25以上、ただし若年性乳がんはやせ型に多い)、更年期障害などによるホルモン療法の影響といった生活環境の変化が考えられます。

 また、35歳未満で発症する場合は「若年性乳がん」と呼ばれます。若年性の罹患率は全体の3%未満(注3)ですが、進行が速く、集団検診の制度がないため、発見が遅れがちです。個人でしっかり予防することがとても重要です。

注1、2 =国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」より
注3 =厚生労働省若年乳がん患者のサバイバーシップ支援プログラムより
※ BMI とは、肥満度を示す体格指数

若年性乳がんの特徴

進行が速い(表1)  再発しやすい  乳管内での進展が多い  授乳期乳がんは予後が不良
家族歴がある  やせ型(BMI18以下)に多い
自己発見が多く、発見時の腫瘍が大きい(平均2.9㎝:表2)  遺伝性乳がんの確率が高い(表3)

表1

表2

表1、2=厚生労働省若年乳がん患者のサバイバーシップ支援プログラムより

表3

「遺伝性乳がん・卵巣がん症候群」って?

 いくつかの遺伝子変異が、乳がんの発症と関連していることが分かっており、乳がん全体の5~10%が「BRCA1」「BRCA2」と呼ばれる遺伝子が原因で発症します。どちらかに生まれつき変異がある場合、生涯に乳がんを発症する確率は約40~90%、若年性では約20%といわれています。

 BRCAに変異がある場合、卵巣がんの発症リスクも高まるとされ、そのため「遺伝性乳がん・卵巣がん症候群」と呼ばれています。

 遺伝性乳がんが疑われる場合、カウンセリングを受けて遺伝子検査で調べることができます。未発病で遺伝子変異が認められれば、25歳から年に1度、MRI検査などを受けながら発病リスクに備える方法もあります。ただ、遺伝子検査(約25万円)やMRI(約2万円前後)は費用が高額で自由診療となります。まずは担当医師や家族と十分に話し合うことが大切です。

日本HBOCコンソーシアムHP参照

30歳を過ぎたら、超音波検査を

マンモグラフィー画像

疑似腫瘍を用いて、年齢別の乳房のマンモグラフィー画像を比較。25歳の画像では、腫瘍の確認が難しい

 現在、岡山県は、40歳以上を対象にマンモグラフィー検診を推奨しています(岡山市は隔年)。しかし「早期発見するためにも、30歳を過ぎたら超音波を受け始めた方がよいでしょう」と土井原先生。

 40歳以下の若い乳房は、高濃度乳腺のためマンモグラフィーで撮影しても全体的に白く映り、がんのしこりを見つけづらいので、あまり有効ではありません。 一方、超音波は小さなしこりでも画像に写るので、見落とす確率が減少します。

検診に行くのが難しい人でも、毎月1回の自己検診を

※自己検診は毎月しないと意味がありません

タイミング
閉経前の人 月経終了後1週間ぐらい
閉経後の人 毎月決まった日
チェックポイント
発赤/へこみ/ひきつれ/乳頭からの分泌/乳頭・乳輪のただれ/左右乳房の形の変化
方法
1.鏡の前で乳房の形を観察
2.立った状態、寝た状態で乳房に触れる(イラスト参照)
3.乳頭をつまんで分泌物の有無を確認する

渦巻き状に円を書きながら指の腹で触る

水平・垂直のラインでも触る

仰向けに寝て、外側から内側に手を滑らせる

週に合計2時間程度の運動も、発症率を下げる効果があるといわれています。食生活に気を付けて規則正しい生活を心掛けましょう

教えて!乳がん治療の最新事情

Q.結婚後、32歳で乳がんを発症。子どもは諦めないとダメ?
A.妊孕(にんよう)性温存という方法があります
 乳がん患者の中には、再発を抑えるための薬物治療で閉経してしまう場合や、ホルモン療法のため、5~10年妊娠できない場合があります。32歳でホルモン療法を始め最長で10年かかった場合、終了は42歳。卵巣は高齢化し妊娠が難しくなります。岡山大学病院では「妊孕性温存」に取り組んでいます。この方法は、薬物治療を始める前に、以下①~③のいずれかの処置を行い、治療後それを体内に戻し、妊娠・出産するというものです。
  1. 卵子を凍結保存
  2. 受精卵を凍結保存
  3. 卵巣を凍結保存
 当院では、現在までに20人がこの方法を選択し、実際に3人の患者さんがここ2~3年内に妊娠、出産しました。妊孕性が受けられる乳がん専門施設の割合は全国でも約25%しかなく、まだまだ発展途中の領域ですが、今まで「子どもを諦めなければいけない」状況だった患者さんにとって、希望の光となっています。

「リビングおかやま」「リビングくらしき」2017年4月15日号掲載

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