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「しつけが足りない」「わがまま」は誤解 発達障がいの特性を理解し、見守り、協力を


〝見えにくい障がい〟といわれる発達障がいについて座談会を開催しました。

「しつけが足りない」「わがまま」は誤解 発達障がいの特性を理解し、見守り、協力を

 発達障がいにより特別な支援が必要な子どもは岡山県で約1割といわれています(岡山県障害福祉課、平成27年度調査に基づく推計)。発達障がいという言葉をよく耳にするようになったものの、まだ理解されていないのが実情。この春、お子さんが発達障がいの診断を受けたばかりという保護者と、活動にかかわってきた皆さんが集まり、〝見えにくい障がい〟といわれる発達障がいについて座談会を開催しました。

発達障がいを理解するための座談会を開催

座談会メンバー
  • 安藤希代子さん
    障がい児の保護者による保護者支援団体NPO法人「ペアレント・サポートすてっぷ」理事長。先輩ママによる相談所「うさぎカフェ」も運営。自閉症の子ども(21歳)がいる。倉敷市在住
  • 大橋俊文さん
    倉敷市総合療育相談センター「ゆめぱる」前所長、倉敷市職員
  • 川原寿理さん
    4人の子どもを育てているお母さん。第3子が発達障がいという診断を受けたばかり。岡山市在住
  • 永野直子さん
    ミナモト建築工房のオープンスペース「くらしのたね」(岡山市北区辰巳)で月1回、子育て座談会を主宰
  • 片山るみさん
    岡山市立上道公民館職員

発達障がいの子はどんな子が多い?

編集部
「発達障がい」を全く知らない人に、「発達障がいの子は、だいたいこんな感じの子が多い」と説明するとしたら?
安藤
一人一人違うが、よく言われるのは、「コミュニケーションが苦手」「人の気持ちが推し量りにくく、学校で友達とトラブルになりやすい」「あいまいな表現を理解しにくい」「人の言ったことを言葉通りにとらえて混乱することがある」「空気が読めない」「こだわりが強い」「先の見通しを立てづらく、不安になってパニックになることがある」などいろいろある。
片山
特性が一人一人異なるので「発達障がい」とひとくくりにはできない。その人その人と知り合って、一人ずつと接することで分かっていく。

どんな生活がいいの?

川原
昨年小学校に入学。教室から出て行くなどの行動が続き、相談を促されて昨年10月末に病院を予約。やっと今年の1月に検査を受けて4月に診断書をもらったばかり。これから何をしていくべきなのか迷っているところ。かんしゃくをよく起こす、危ない行動をする、順番を守れないなどが困り事。
安藤
発達障がいの子は、見通しが立たないと不安が強くなるという傾向があるので、分かりやすい生活を心掛けるといい。決まったルーティンで毎日同じ時間に同じことが起こる生活が安定しやすい。
川原
そういえば、始業式や卒業式もスケジュールが分かって見通しが立つと参加できるようになった。次に何があるかが分かると待てる。
安藤
本人の調子が良いときは、変わったことが起きても対応できるが、調子が悪いときには、同じ日々の繰り返しで安定する。平日頑張っているから休みの日に発散させようと休日にあちこちに遊びに出掛けると逆効果になることも。連れて行くなら決まったところや比較的刺激の少ない場所がベター。普通の音が大音量に聞こえるなど、通常の見え方や聞こえ方と異なる子が多い。うちの子の場合は、音や人の刺激が強すぎるとパニックになるから、ショッピングセンターに2年間連れて行かなかった。
それぞれの障がいの特性

岡山県発行の障害者差別解消法・あいサポート運動ガイドブック「バリアフリー社会のおもいやり」より

しつけの問題?

編集部
どんな誤解・無理解を感じている?
安藤
発達障がいはしつけの問題ではないのに、「しつけてない」と言われる。実際は人の3倍くらい注意している。公共の場でルールが守れないときやパニックを起こしているときは「もっと怒ればいいのに。なんであのお母さん怒らないの?」と思われるから、「怒ると逆効果」と分かっていても人目を気にして怒ってしまうケースがある。
永野
優劣は全くないのに、少数派という理由で生きにくい社会になってしまっている。親のしつけや育て方は原因ではないことが浸透すればいいと思う。
大橋
「特別な知識を持った人が特別な場所で支援しないといけない」という思い込みで「私では対応できません」という人がいる。特別な場所で特別な支援を受けないと成長が保障できないというのはよろしくない。子どもたちが毎日通っている場所で発達が保障されるべき。身の回りで知らず知らずのうちにかかわっているはず。苦手さを持った子がたくさんいるんだよという認識を持ってほしい。

偏食はわがまま?

永野さん
永野
偏食の子のお母さんはどうしたら食べられるか悩んでいる。
安藤
発達障がいの子の多くに偏食が見られるのは、感覚過敏が原因の一つ。ぐにゅっとしたもの、炊き込みご飯や混ぜご飯、カレーや丼がダメという子は多い。何が入っているか分からないという見通しの悪さが原因になっていることも。
大橋
レタスをかんで痛いと感じる子もいる。
安藤
偏食が軽度であれば成長で解決する。ただし、感覚過敏がひどくなるときは、本人の置かれている環境が悪化している可能性があり、適切な環境になると過敏が緩和されることもある。

苦手を克服させるべきなの?

川原
今すぐ手を打たないと、思春期を迎える10歳ごろが心配と言われて不安になった。
大橋
現在は大人が待てない時代。発達障がいの子はゆっくり育つ部分があるので、大人はゆっくり見てあげてほしい。
安藤
昨日こんな相談を受けた。「苦手な人間関係を避けずに向き合って克服させたい。どうすれば?」と。発達障がいのある子どもたちは苦手なことや嫌いなことからアプローチすると、たいていうまくいかないもの。好きなこと、得意なことからアプローチして、そこが伸びると苦手なことも一緒に持ち上がる。あえて一番気になっていることから目をそらすという方法がある。例えば、ある小さいお子さんが、どうしてもトイレで用をたせないで母親が困っていた。母親はうまくやらせようと必死になったが、子どもは余計に不安が強くなった。「トイレに行けなくてもいい」というくらいのノリで、恥をかかなくていい程度のフォローにして「大丈夫だよ、先生が助けてくれるから」と声をかけ、ほかのことを真ん中に持ってくると、子どもは安心感が大きくなり、あるときふっと行けるようになったということがある。どこかに無理がくるようなことはあえて真正面から取り組まなくていい。

周囲にどう伝える?

川原さん
川原
周りの人にどう伝えるべきなのか悩んでいる。「発達障がいなんです」ということだけを伝えると、「大変だね」と言われるだけ。「こういうことが苦手なんです」と言えたらいいけど、まだまとまっていなくて。
大橋
子どもに長くかかわってもらう人、幼稚園、保育園、学校の先生にはきちんと伝えた方がいい。どう伝えるかもポイント。「こんな特性があるので、こういう配慮をしてほしい」というのは親御さんしか言えない。親からすると苦手なことばかり目につくけど「こういうことが得意。好き」ということも一緒に伝えると、先生や支援する人は支援のヒントになるし、共通の話題にもなる。

本に書いてある通りはできない

安藤さん
川原
昨日の朝は「制服が見当たらないから着替えられない」と言って布団に隠れていた。「着替え探せ」とかんしゃくを起こして蹴ってきた。「子どもを怒らず優しく」と専門書には書いてあるが(笑)、分かっているけれど怒ってしまう。
安藤
怒ってしまうのも家族ならアリじゃないかな。そのことでむやみに自分を責める必要はない。支援者であればプロとして適切な対応をするべきだけど、お母さんは支援者にならなくていい。自分が完璧な親になろうとせず、助けてくれる人を見つけて周囲に助けてくださいと言う。どちらかというとそっちを頑張ればいい。

お母さんを支えて

大橋
「うちの家系にこんな子はいなかったのに」と身内から責められるなど、親せきの言葉が家族を深く傷つける。
永野
夫の理解が得られず「実家に伝えてほしくない」と言われる人も。その場合、お母さんが一人抱えてしまうことに。
安藤
日本は一番近くにいてケアする人をなぜか責める傾向がある。本人の一番近くで育てているお母さんを支えるのが周囲の役割。それぞれの場にいる人が、もっとお母さんの話を真摯に受け止めて聞いてほしい。役に立つ答えを言うか言わないかではなく、真心を持って受け止めること、それが非常に不足している。どうかお母さんたちを支えてほしい。
永野
母というのはすごく大事なキーポイント。お母さん次第で子どもはどんどん変わっていく。
大橋
最近では研修に参加する祖父母の姿も見られ、関心の高さが伺える。「ときどきお孫さんを預かってあげるだけでもお母さんの手助けになるはずですよ」と伝えている。

どこに相談すればいい?

片山
岡山市には、岡山市発達障害者支援センター「ひかりんく」があるので、そこに連絡すれば次につなげてくれる。福祉事務所ごとにある地域こども相談センターに相談してもいい。公民館では発達障がいに関する地域のグループ活動があるほか、公民館の主催講座もある。公民館をどんどん使ってほしい。
安藤
発達障がい児を育てた保護者が、傾聴や寄り添いなどを学んで研修を受けた「ペアレントメンター」も心強い。グループ相談や保護者の集まり・研修で、先輩保護者として体験を語るなどの活動をしている。
大橋さん
大橋
倉敷市では「とりあえず、ゆめぱるへ」という言葉がある。ゆめぱるは、困っている保護者の声でできた施設。「何をどうしたらいいのか分からない」というお母さんたちの不安にとことんつきあいますよと呼び掛け、どんな泣き言を言ってもいいし、安心して来てもらえる場所。学校の先生と話すのは敷居が高い、親だけで言いにくいという人は、ゆめぱるで手伝ってくれる。義務教育ではない高校に伝えていいんですかと悩む人も多い。合格した後でもいいから、早い段階で知らせてほしいと高校の先生は思っている。入学前なら担任を検討できる。
安藤
発達障がい児の保護者は「私の悩みを本当に分かってくれる人はいない」と感じていることが多い。例えば「ごはんを食べてくれない」という言葉に、「うちの子もそうよ」「みんなそうよ」と返され、心の中で「違うのに」と思う。同じ泣き言を言うにしても、響く相手に言わないと救われない。そこで、ペアレント・サポートすてっぷでは、火曜と木曜にカフェ形式の相談所「うさぎカフェ」を開いている。発達に不安のある人と支援をしている人を対象にしたクローズド形式のカフェ。みな同じ立場なので、定型発達の子のお母さんには話しづらいマイナスな感情を口にしてもOK。共感し合える場にしたかったので看板も出しておらず、庭に入っていかないと「うさぎカフェ」の看板は見えない。すり減ったエネルギーを蓄えてもらいたい。
片山さん
 
また、入学前の不安や学校生活に関して毎年同じような相談が保護者から寄せられるので、それに答えるハンドブック「ひとりじゃないよ」を発行した。一昨年、NHKの「あさイチ」で紹介され、全国各地から問い合わせがあった。
片山
岡山市の公民館では、6年前から毎年、保護者の体験談をまとめた冊子を出しており、7年目の今年は、親の会を紹介する冊子をまとめた。情報が多過ぎて何が必要な情報か分からない今の時代、保護者同士がつながり、情報を共有していくことは大切だと思う。
座談会の様子

発達障がいと分かった後、それまでは子どものことを「できて当たり前」と大人目線で見ていたことや、子どもの気持ちを無視していたことなどに気付くことができた。本人の大まかな特性が分かり、いくらかでも行動を納得できるようになったので、検査を受けて良かったと思う。(川原)

 終了後、川原さんから「発達障がいという言葉の重みに、心が苦しくなることがあるが、恥ずかしいことではない。わが子の個性は、常識にとらわれず、未知数で、愉快で、面白いものをたくさん持っている。親としてその特徴を長所として促していければ」というコメントが届きました。

主な相談窓口と、座談会の中で登場した会やカフェ

岡山市発達障害者支援センター「ひか☆りんく」
岡山市北区春日町5-6 岡山市勤労者福祉センター1階
8:30~17:15 土・日曜、祝日、年末年始休み
岡山市在住の人が対象
☎086(236)0051まずは電話を
おかやま発達障害者支援センター
岡山市北区祇園866
9:00~17:00 土・日曜、祝日休み
岡山県内(岡山市を除く)在住の人が対象
☎086(275)9277まずは電話を
※ペアレントメンターおかやま事務局への問い合わせも、この番号へ
NPO法人岡山県自閉症協会
岡山市北区南方2-13-1きらめきプラザ2階
オープン:月・火・木・金曜の10:00~15:00
☎086(801)4010
ペアレントメンターによる無料電話相談は毎週金曜11:00~14:00 ☎086(801)4009へ
くらしのたね子育て座談会~発達障がいを考えよう
毎月1回開催されている座談会

毎月1回開催されている座談会

岡山市北区辰巳14-101
5月・6月の予定…
・5/31(水) 9:30〜 11:30 ・6/28(水) 9:30〜 11:30
要予約、参加無料
☎086(246)1188 ミナモト建築工房内

倉敷市総合療育相談センター「ゆめぱる」
倉敷市笹沖180 くらしき健康福祉プラザ1階
9:00~17:00 月・日曜、祝日休み
倉敷市在住の人が対象
☎086(434)9882 *まずは電話を
うさぎカフェ
看板

敷地の中に入って行くと、この看板が見える

倉敷市粒浦217-2
5月のオープン…
18日(木)・25日(木)・28日(日)・30日(火)10:00~15:00
対象者:発達に不安のある子どもの保護者・関係者・支援者
※個別相談(要予約)は13:00から1時間単位
☎080(1924)3496 ペアレント・サポートすてっぷ 安藤さん

座談会の中で紹介されたブックレットと冊子

「倉敷子育てハンドブック ひとりじゃないよ」vol.1、vol.2 「あせらず あわてず すすもうや」
「倉敷子育てハンドブック ひとりじゃないよ」vol.1、vol.2 「あせらず あわてず すすもうや」
NPO法人ペアレント・サポートすてっぷが発行。本体価格500円(税別)
愛文社書店(倉敷市阿知)、イオン倉敷2階「福祉の店 あゆみ」(倉敷市水江)、くらしき健康福祉プラザ管理事務所(倉敷市笹沖)、つづきの絵本屋(倉敷市川入)などで販売
岡山市内の公民館で活動している発達障がい者支援に関する講座・グループの活動を紹介。
岡山市内の各公民館で無料配布

●岡山県自閉症協会セミナー「成人期の自立に向けた子育て~親として支援者として」

 5月28日(日)14:30~16:30、きらめきプラザ3階(岡山市北区南方)。「成人期の自立に向けた子育て~親として支援者として」と題して、NPO法人それいゆ副理事長・江口寧子さんが講演。親として大切にしてきたこと、成人期の自立を意識して取り組んだこと、支援者として親に伝えたいこと、成人期の自立にはどのような姿があるのかなどについて話す。参加費は一般1500円。できるだけ要予約。☎086(801)4010岡山県自閉症協会

「リビングおかやま」「リビングくらしき」2017年5月20日号掲載

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