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心理学者が教えてくれる やる気の処方箋


新しいことを始めたくなる春。やる気スイッチの入れ方と持続法について、心理学者に聞きました。

心理学者が教えてくれる やる気の処方箋

新しいことを始めたくなる春。やるなら長続きさせたいものですよね。
しかし、読者にアンケートをとったところ「3日も続かない」「やる気が起きない」など、さまざまな体験談と悩みが集まりました。
やる気スイッチの入れ方と持続法について、心理学者の鎌田雅史さんに聞きました。

鎌田さん

鎌田雅史さん

就実短期大学
幼児教育学科 講師

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読者の体験

 ダイエットするぞ~とやる気満々でランニングマシーンを買った夫と娘。 何回か使った後は、案の定置きっ放しで、邪魔でしょうがない。 その後、外でランニングするから~とランニングシューズを買ったものの、3日と続かなかった。(48歳・倉敷市、Kさん)

イラスト/銀杏早苗

「勉強しないといけないんじゃないの?」と子どもに言ったところ、「そう言われるとやる気がなくなる」と言われた。(45歳・瀬戸内市邑久町、Yさん)

 大人は経験上、分かっているからやらせようとしてしまいますが、実は逆効果。人間は「自分で決めたい」という特性を持っています。叱りつけたりすれば、むしろ子どもが勉強しない可能性を高めてしまいます。

 子どもであれ、部下であれ、相手にとって大切なことを命令通りにやらせようとすればするほど、やる気は落ちていきます。本人がいろいろ考えて「よし」と立つ瞬間が大切。進路など特に大切なことは、自分で最終決定をさせることです。

 親にできることは、やる気のアシスト。親も歴史に関心を持つとか、本を読むとか、学校で習うことが日常生活とつながるような会話をするとか、やる気を持てるような家庭環境を整えることならできますよね。

自分の得た健康法の情報を、夫に否定・失笑されると、たちまちやる気を失ってしまう。(60歳・岡山市北区、Nさん)

 「効果があると確信していること」と「私にできること」をやることが重要。これは心理学上、2つの信念と言われます。「絶対に効果はあるけど私には厳しい」や「続けられるけれど効果は半信半疑」…このどちらも3日坊主になりやすいのです。そして実は、意味があると信じられるかどうかは、周りの人の影響をすごく受けるものです。「そんなサプリ意味ないよ」「そんな参考書は力がつかないよ」などの否定的な言葉は、簡単に他人のやる気を奪います。逆に、「続いているね」「ちょっとやせた?」などの言葉だと、周りの人が認めてくれたことを感じられて頑張る気持ちにつながります。

おなかが気になりだした夫。これ以上おなかが出るとさすがにまずいと思ったらしく、エアロバイクを部屋に設置したが、数日でギブアップ。(33歳・岡山市南区、Yさん)

 「これ以上太ると困るから」「貧乏になるから節約しよう」など悪い事態を想定したネガティブな理由で目標設定をするとやる気を保ちづらい傾向が見られます。その目標を思い浮かべるたびに嫌な気持ちになり、頑張ることにつながらないからでしょう。ネガティブ思考の人は、できていないことに目がいきやすくなるのです。

 逆に、「あの服を着たいからダイエットしよう」「浮いたお金で旅行に行こう」など、楽しいことを思い浮かべて、幸せになれる目標を立てると、できたことに目がいきます。前向きな目標を頭に浮かべるとポジティブな気持ちも一緒にくっついてくるのです。

ボールペン字の練習本を買ったが、1日やっただけ。(35歳・岡山市北区、Kさん)

5年日記を買っても続かない。ベッドの近くに置いて目につくようにしたが、やっぱり続かない。(28歳・岡山市北区、Nさん)

 毎日の生活の中で、やる気を持って取り組む〝時間枠〟を作るというのも一つの方法。例えば、大学の教員は学校の仕事が多く、まとまった研究時間が取れないものですが、コンスタントに論文などの研究成果を上げている先生は、「何曜日の何時から何時は研究時間にあてる」と時間枠を作っている人が多いものです。続けたいことをルーティン化してこなすというのも、持続するためのテクニックの一つです。

やる気がなく体がだるいです。(33歳女性・倉敷市、Tさん)

やる気スイッチが全然入りません。(38歳・岡山市北区、Yさん)

 私たちのやる気は社会的なもので、周囲とのつながりや人間関係から出てくる場合が多いものです。やる気が出ないときは、「何をしよう?」と自分の中を探すより、新しいことにトライしたり、普段行かない場所に足を運んでみたりしてみて、やる気のタネを集めてみましょう。新しい出会いが刺激になります。

 また、食事や睡眠など基本的な生活と安定した人間関係が、やる気の前提になります。疲れている人は十分休むなどして自分の生活を見直し、整えましょう。

妊娠中、2542ピースのパズルを買って出産までに完成させようと意気込みましたが、2週間で外枠しか完成せず、放置。そのうち出産予定日が近づき結局全部崩してお蔵入り。もっと易しいタイプを選べばよかった。(35歳・岡山市南区、Iさん)

 気分が乗っているときに目標を設定すると高い目標を立ててしまいがちです。目標設定は高すぎても低すぎてもやる気は続きません。逆に簡単すぎるパズルであってもやる気は起きないでしょう? ある研究グループによると、目標はジャンプして届く場所にするのがよいとのこと。今回のケースでは難しいかもしれませんが、うまくいかないときに全部を嫌にならないで、少しやさしめの中間目標を探すことができるとよいですね。

やりとげた日はスケジュール帳などに記録し、モチベーションを上げています。(43歳・倉敷市、Yさん)

ストレッチをした日はカレンダーに印をつけて励みにしている。(41歳・岡山市北区、Mさん)

 アンケート結果では、続けるために記録を残すという読者が多いですね。確かに、可視化するのは効果があります。ダイエットでいえば、効果のある行動を続けていると体重は減ってくるので、その記録で効果を確信することができます。カレンダーなどにチェックをするだけでも「できた」という自信がやる気につながります。

 「チェックが30個になったらランチに行こう」など、自分へのご褒美とつなげるのも効果的です。

読者の実践から学ぼう!

「やる気を持続するために何をしていますか」の設問に、読者から集まったエピソードを紹介します。

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資格試験にトライしたときの実践内容…試験日から逆算して、勉強の計画を立てる。休む日は休んで、勉強する日はする。メリハリをつける。頑張った自分にご褒美をあげる。岩盤浴に行く、ケーキを食べるなど、小さなことでも頑張れる。あとは、時間の確保。家事が終わってからだと眠くて続かないので、職場の昼休憩を活用し、過去問を解くようにしていた。短時間なので集中できて効率が上がり、合格した。(47歳・岡山市北区、Oさん)

独りで続けようとしないこと。誰かに宣言してからすること。毎日必ずしようと思わないこと。そして、できるだけ誰かに褒めて認めてもらうこと。(60歳・岡山市北区、Nさん)

昨年2月から、障害のある人たちと一緒に喫茶店でボランティアをしています。きっかけは、私が甲状腺機能低下症になり、毎日の起伏が激しく、自分を嫌になり、誰のためにも役に立っていないなどと落ち込んでいたこと。以前から、障害があっても元気に対応している彼女たちを見てすごいなぁと思っていて、私も勇気を持って飛び込みました。今では彼女らに教えてもらったり頼りにされたりの毎日。間近で笑顔をもらい、元気に過ごせています。お店に感謝するとともに、あのときの自分の勇気に感謝です。ほんの少しの勇気で毎日が変わることを伝えたくて投稿しました。(59歳・岡山市南区、Sさん)

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本当にしたいか、続けられるか、よく考えてから始める。計画を綿密に立て過ぎない。(35歳・岡山市北区Kさん)

ウォーキングかマラソンのどちらかを毎日やりたいけれど、 天気や寒さを理由に、ついやめてしまう日があるので、携帯電話についている万歩計で歩数を毎日確認してやる気を出すようにしています。できなかった日もストレッチをやっています。(33歳・岡山市中区、Mさん)

自分だけで続けることは無理だと分かり、月2回クラブの人と一緒に走っている。周りを巻き込むことで「やめない」結果につながっている。(48歳・岡山市北区、Fさん)

面倒な仕事を後回しにしがち。そういう大変だと思える仕事こそ、何も考えずに、すぐにやり始めること。実際に手を付けてみると集中力が徐々に高まり、思ったより大変ではなかったことが分かる。(50歳・岡山市北区Tさん)

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毎年日記帳を買うが、1カ月も続かなかった。毎日つけようとせず、思い出した時に書くことでOK!とハードルを下げたら、今年は少し続いている。(40歳・赤磐市、Nさん)

やる気には波がある。
続けていると「やる気スイッチ」の
入るときが何度も来る

 8年前から韓国語を勉強しています。最初は話せる友達に憧れ、独学で開始(1度目のやる気スイッチ)。実力を試そうと試験も受けましたが、話す機会もあまり無く、だらけ始めて数年間勉強をさぼっていました。日常的に勉強する習慣付けにと4年程前から教室に通うことを決心(2度目のやる気スイッチ)。しかし、特に目標を設定せず、試験にも落ち、やる気も自信も無くなり気味に。そんなとき、先生から薦められたスピーチコンテストに出場。はじめは嫌々でしたが、拍手をもらい、賞もいただき、参加者との交流もでき、もっと頑張りたい気持ちが自然に芽生えました(3度目のやる気スイッチ)。

 その後、韓国語を勉強していることをSNSで発信していたら、知り合いが韓国語学習者や韓国人を紹介してくれたり、韓国人のフォロワーが増えたりで、芋ずる式に毎日の生活で韓国語を使う場面が多くなり、勉強がはかどるように(4度目のやる気スイッチ)。また、スピーチコンテスト後、観客の一人から「とても楽しそうに話しているので、私も韓国語を始めます」と言われた時、自分が人にやる気を与えたことがうれしくて、もっと頑張ろう!という気持ちになりました。(編集部M・H)

「リビングおかやま」「リビングくらしき」2017年3月11日号掲載

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