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復活!古民家・町家ストーリーと今どき活用法


古民家・町家を残そうと奮闘する人々の物語といまどきの活用法を探ります。

復活!古民家・町家ストーリーと今どき活用法

もんげ〜岡山アイコン

 古民家での食事をおいしく感じたり、町家で時間を忘れてほっとしたりするのはなぜでしょうか。長い時を刻んだ建物とその空間には、目に見えない温かな空気が流れているようです。古民家・町家を残そうと奮闘する人々の物語といまどきの活用法を探ります。

旧堀和平邸築約200年

月1の掃除をコツコツ10年 今はNPOが費用をかけず知恵を絞って運営

堀和平旧宅外観
中屋の2階

広々とした空間でゆったりした時間を過ごせる中屋の2階。立派な梁(はり)も見もの

堀和平旧宅外観

毎週土・日曜午後に開かれる小・中学生対象の寺子屋。ひと月2000円で土・日なら何回来てもOK

堀和平旧宅外観

今年6月に開催された総社・真庭のおにわ市場&スイーツマーケット。オープン前には長蛇の列が

堀和平旧宅外観

野菜たっぷりの匙ランチ(1000円)。
月・火・木・金曜11:00~14:00(OS)営業。満席の日も多いので予約した方が確実

 明治期の洋画家・堀和平の旧宅は、築200年の古民家。子孫が総社市に寄贈し、現在、NPO法人「総社商店街筋の古民家を活用する会」が運営しています(理事長・金丸由記子さん)。NPOの前身は「堀家を利用する会」。2003年の発足以来、毎月一度の掃除を10年間、地道に続けてきました。その後、利用する会のメンバーが中心になって現在のNPOを立ち上げてから、一気に活用が進展したそう。

 母屋は「カフェ匙(さじ)」、中屋は「つながるカフェ・線」、東屋は「休日寺子屋まなびのわ」として活用。ランチを提供する匙は、口コミで人気が広がり、満席の日も。朝市などイベントも開催しています。一方、水~土曜営業の「線」の特徴は、日替わりオーナー制。毎日異なるオーナーが、オリジナルのランチやコーヒーなどを提供します。寺子屋では、岡山県立大学の学生が地域の小・中学生を対象に学習を支援します。

 費用をかけないための工夫も光っています。一般的に、古民家の維持・修理には大金がかかるものですが、お金をかけずに修理しようと、ワークショップ形式で参加者が家の修理に関わります。昔の方法でたたきを再現したときもワークショップを開き、皆で作業しました。同NPO理事の高山和成さんは、「助成金をあてにしなくても運営できる仕組みの方が継続します。日替わりオーナー制にしているのも、誰かを雇用せずして運営するアイデアの一つなんです」と話します。

金丸さんと高山さん

金丸さん(左)と高山さん

◆朝市「おはよう市」
日時:毎月第4日曜9:00~11:00
日本海の魚、野菜、パン、スイーツなど
◆町家で左官教室
日時:11/13(日)10:00~12:00
内容:総社の左官職人・大賀さんから左官技術を学ぶ。
参加費:500円。教室は定員に達しましたが、見学は可能

【旧堀和平邸】

総社市総社2-5-20
TEL.080(3888)9433高山さん
TEL.070(5300)5880 匙

夢空間はしまや築約130年

登録文化財の米蔵がカフェギャラリー、音楽会場に

なまこ壁

外壁は倉敷ならではの、なまこ壁。お米に湿気がくるのを防ぐため、階段7段分床が高くなっています

作家の作品を展示

昔、反物を入れていた棚もギャラリーとして健在。作家の作品を展示

近藤尚哉さんと近藤幸子さん

ピアノ伴奏で指導する近藤尚哉さんと近藤幸子さん

堀和平旧宅外観

天井が高く、広い空間の中で歌を楽しむ「愛唱の会」は毎回10~15人が集まります

 江戸時代は染物をしていて、明治2年に呉服店「はしまや」を創業した楠戸家住宅。現在の店構えは明治15~20年に建築、平成8年に母屋と5つの建物が国登録有形文化財の岡山県第1号に登録され、平成14年には、母屋の店舗部などが倉敷市指定重要文化財にもなりました。

 登録文化財の一部である米蔵は、当初は地域のお米を預かる場所として利用され、戦後は物置でしたが、文化財に登録されたのをきっかけに改装。片付け、大掃除、リフォームにより、「夢空間はしまや」が誕生しました。蔵の内壁は通常、漆喰(しっくい)壁ですが、ここは米俵を積み上げておくため、板壁。壁に隙間があいてきたとき、あいた部分に板を指し込めるよう溝を作っている点など、長持ちさせる技術が随所に見られます。

 日ごろはカフェギャラリーですが、月1講座も多彩。毎月第2金曜に開催される「愛唱の会」には児島などからも参加者が集まります。「天井が高いので歌声とピアノの音がよく響き、建物に溶け込みます。木のぬくもり、やわらかな光が心地いいです」と講師のソプラノ歌手・近藤幸子さん。会員制ではなく、申し込みも不要なので観光客が参加することもあるそう。

楠戸さん母娘

オーナーの楠戸恵子さん(右)と娘の紀子さん

【夢空間はしまやの月1講座】

◆「青の星」の会
日時:毎月第1木曜11:00~12:00。
次回開催は11/3ではなく11/10なので注意
参加費:1000円。申し込み不要。
内容:皆で歌い、発声のアドバイスを受ける。
◆愛唱の会
日時:毎月第2金曜11:00~12:00。次回は11/11
参加費:1000円。申し込み不要。
◆「源氏物語」塾
日時:毎月第3水曜13:00~16:00。次回は11/16
参加費:1500円(飲み物付き)。申し込み不要。
内容:源氏物語を読んで解説を聞く。
◆「町家の丁寧な暮らし」
日時:11/18(金)①14:00~②16:00~
会場:はしまやの母屋 参加費:500円
内容:町家を美しく磨き込むための暮らしの知恵や作法を学ぶ。定員各回15人
申し込み:備中no町家deクラス事務局
Email=yoyaku@machiya-class.net
問い合わせTEL.090(6419)6462

【夢空間(サロン)はしまや】

倉敷市東町1-20
TEL.086(422)2564
10:00~17:00営業 火曜定休

旧福岡醤油建物築約130年

約5000人の署名を集めた住民の思いが強い建物

旧福岡醤油外観
特注の瓦

特注の瓦には一つずつ「福」の字が。右の瓦はネの字が異なります

作品の展示

アンジェラ・ブロックの作品とノア・バーカーの音の作品を展示。県外からの来場者や外国人も多く訪れています

金融機関の名残りのカウンター

地元の金融機関がここで営業していた時期があり、中に入るとすぐ目に入るカウンターはその名残りだとのこと

 後楽園の門前にある岡山市北区出石町は、空襲で焼け残った数少ない中心市街地。古い建物や細い路地が、城下町の歴史と面影を伝えています。その中でもひときわ立派で出石町のランドマークとなっているのが、旧福岡醤油(しょうゆ)建物。醬油醸造工場として昭和半ばごろまで醬油の醸造と販売が行われ、地元の人から愛されてきました。南側半分は、明治20年代に建てられ、明治時代の特徴を色濃く残しています。北側半分は、昭和11年に建てられたそう。

 この貴重な建物を残したいと、4年前、地域住民で作る「福岡醤油建物プロジェクト」が発足。「すす払いボランティアで掃除をしたり、〝たまりバー〟を開催したりして、街の共有財産だという思いを周囲に広げていきました」と同プロジェクト実行委員長の山本賢昌さん。

 「残してほしい」という思いが伝わり、所有者も協力を表明。平成27年には保存・活用を求める署名を約5000人分集めて、岡山市に提出しました。現在、「岡山芸術交流」の会場の一つとして現代アート作品が展示されています。今後の活用は未定ですが、地域住民の活動で生き残った古民家の一つといえるでしょう。

【旧福岡醤油建物】

岡山市北区弓之町 17-35
11月27日(日)まで岡山芸術交流の会場の一つとして利用されています。展示を見るにはチケットが必要
TEL.086(221)0033
岡山芸術交流実行委員会

中村邸築約95年

茶室もある個人宅 イベント時、希望者は室内見学も

番外編

茶室

茶室。洗い屋さんが洗うと新品のような天井が現れました

中村邸から旭川を望む

すぐ目の前には旭川が

 茶屋町で農業を営んでいた中村家が、大正10年前後に、岡山市北区出石町に別宅として建てた家。ここを選んだのは、旭川と後楽園と鶴見橋を望め、最高の風景が楽しめるから。茶室や庭のある立派な2階建て。多くの親せきが遊びに来たり、下宿先として使われたりしていたそうです。

 旭川沿いは、中村邸の2軒先がすべて空襲で焼けたため、空襲直後は、焼け出された人たち数十人がここに避難。「何日か寝泊まりさせてもらった」と思い出を語る人もいるそう。

 現在は子孫の中村俊夫さんが妻と二人暮らし。自宅として利用していますが、堤防造成と道路の延長を理由に、国土交通省と岡山市から立ち退きを求められています。立ち退くときには取り壊さねばならず、それまで多くの人にこの家を見てもらえればと、イベント時には、室内の見学ができるときもあります。12月5日の落語会参加者も、希望すれば室内を見学することができます。

◆「第6回 桂小鯛のひいな落語会」
日時:12月5日(月)18:00開場18:30開演
会場:中村邸(岡山市北区出石町)
倉敷市出身の落語家・桂小鯛の出張落語会。木戸銭は当日1800円、予約した人は1500円。定員30人(先着順)。予約は電話で受け付け。
TEL.080(1646)0117 ひいな山田さん

古民家・町家は地域の歴史そのもの

中村泰典さん

倉敷町家トラスト代表理事・中村泰典さんに聞きました

 古民家は築100年以上の建築物。江戸・明治期の民家や屋敷をいいます。一方、家が連なっているような街の中にあり、道に面してすぐに玄関、というのが町家。時代を問いませんが、江戸期から昭和の町家を残したいと考えています。

 古民家・町家は、現代のライフスタイルに合わないという理由に加え、建築基準法や消防法により、増改築には制約が多く、所有者に思い入れがないと建て替えられるケースがほとんど。住民が残そうと意識を高め、ルールを作らないと残りにくいのが現状です。一方、倉敷、津山、高梁市吹屋は、国の重要伝統的建造物群保存地区(伝建地区)なので、古い建造物が残ってきました。倉敷伝建地区には町家が多く残っています。

 古民家や町家は地域の歴史そのものであり、人々の記憶と直結します。古い建物がなくなると、地域の目に見える歴史も消えてしまうことになります。そういう意味でも、寺社やお城だけが文化財なのではなく、小さな町家や古民家も文化財だという認識が広がっています。

 私たちが町家トラストを始めたのは、10年前。町の真ん中には高齢者しかいない、空き家が増える、商店街が衰退する…コミュニティーは崩壊寸前でした。町家で文化が育まれてきたことを思えば、町家が消えることで街のアイデンティティーがなくなってしまう、そんな危機感もありました。空き家一戸ずつと向き合いながら、この10年で14軒の再生に関わりました。

 また、建物だけでなく、町家の中で育まれてきた暮らしの文化も残したいと思い、「町家deクラス」というイベントを企画し、体験型プログラムを提案(下記参照)。伝統的生活空間で和の文化を体験できる内容です。

「備中no町家deクラス」11月3日(祝)~12月3日(土)
会場は倉敷町家トラスト(倉敷市東町)をはじめ、美観地区とその周辺、児島、玉島、鴨方、金光、矢掛、高梁、総社、新見、早島などの27軒の町家。盆栽教室や手ぬぐい作り、和食の作法など、47のプログラムが予定されています。開催日程や内容は、町家クラスまたは倉敷町家トラストのホームページで確認を。
主催=備中町並みネットワーク 共催=岡山県備中県民局

【開催内容(一部)】

一部を除き、予約定員制。すでに定員に達している場合もあるので確認を

  • ◆町家で投扇興体験
    11/23(祝)10:00~15:00
    かもがた町家公園(浅口市鴨方町)
    参加無料。定員なし。予約不要
  • ◆世界で一つのベンガラ手ぬぐい作り
    会期中の月・水・土・日曜
    吹屋案内所下町ふらっと(高梁市成羽町吹屋)
    参加費1500円。定員各日15人程度
  • ◆狂言ワークショップ
    11/13(日)14:00~16:00
    つくぼ片山家(倉敷市帯高)
    参加費1000円。定員20人
  • ◆井上家で「匠のワザ」を見てみよう
    11/19(土)・11/20(日)午前は10:00から4回、午後は13:00から5回
    国指定重要文化財井上家住宅(倉敷市本町)
    資料代200円。定員各回15人
  • ◆和食の作法
    11/29(火)11:30~13:30
    吉井旅館(倉敷市本町)
    参加費3500円。定員30人
  • ◆青竹細工
    11/6(日)13:30~16:30
    倉敷町家トラストN家土蔵(倉敷市東町)
    参加費2300円。定員10人

【参加申し込み】

備中町家クラスHPの申し込みフォームまたはFAX086(451)8693

【問い合わせ】

備中街並みネットワークTEL.090(6419)6462
Email=yoyaku@machiya-class.net

「リビングおかやま」「リビングくらしき」2016年11月5日号掲載

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