特集記事

アンガーマネジメント 6秒で怒りはクールダウンできる


家庭でも職場でも、さまざまな場面で腹を立てることは多いもの。
その怒りの感情をためこんでいませんか。。

アンガーマネジメント 6秒で怒りはクールダウンできる

川上陽子さん

日本アンガーマネジメント協会認定中国支部長 シニアファシリテーター、ビジネスコミュニケーション研修講師

Y’s オフィス代表

川上陽子さん

 売り言葉に買い言葉。家庭でも職場でも、さまざまな場面で腹を立てることは多いもの。その怒りの感情をためこんでいませんか。怒り(アンガー)をコントロールするヒントを、日本アンガーマネジメント協会中国支部長の川上陽子さんに教えてもらいました。

イラスト/銀杏早苗

 アンガーマネジメントは、1970年代にアメリカで始まった、怒りと上手に付き合うための心理トレーニング法。怒らないで我慢するのではなく、自分の怒りをコントロールするための、心理学をベースにした一つのテクニックです。

 テクニックは大きく分けて2種類あります。一つは、イラッときて態度に表す反射行動をしないためのテクニック、つまり対処術。これは比較的簡単に日常生活に取り入れられます。もう一つは、そもそも怒りがわきにくくなるような体質改善をしていくこと。トレーニングを積むので少し時間がかかります。ここでは前者の対処術について紹介しましょう。

 

1

イラッとしたとき、6秒の間に試してみよう

スケールテクニック

スケールテクニック
あなたのその怒り、点数を付けるとしたら何点?今までの人生で一番の怒りを10とする

6秒をしのげば怒りはしずまる

 まず紹介したいのは、「6秒ルール」。怒りのピークは6秒といわれています。ある事象を解釈して感情がわきあがると、顔が赤くなったり、鼓動が早くなったりするなど体にも変化が表れます。興奮状態のアドレナリンが出て体内に行き渡って落ち着くのが約6秒。ピーク時の感情のままに行動するとろくなことになりません。後悔先に立たずという事態を避けるのが6秒ルールです。

 最も簡単なのは深呼吸ですが、カウントバック(数を数えたり引き算をしたりする)、コーピングマントラ(呪文を唱える)、タイムアウト(その場を離れる)など、いろいろなテクニックがあります。脳は結構単純で、怒りの事象から意識をそらすと、すぐクールダウンするのです。

 同時に行ってほしいのが「スケールテクニック」。怒ったとき、その怒りの度合いに点数を付けます。点数を付けることで自分の怒りを客観視できるのです。人生で最大の怒りを10とすると、意外に今の怒りは小さいことに気付きます。

カウントバック

カウントバック
まず100を思い出し、100から13ずつ引く。そうすると意識がそちらに向き、目の前のイラッときている事実から意識をずらすことができる。単純に数を数えたり、深呼吸するだけでもよい。
コーピングマントラ

コーピングマントラ
女性には取り組みやすいと好評なのがコレ。「気にしない」「よくあること」「まあいいや」など、自分の怒りに対処する呪文を唱える。ポイントは、「いなくなっちゃえ」などネガティブな言葉を使わないこと。
タイムアウト

タイムアウト
けんかスパイラルに陥りやすい親子や夫婦などに有効。「お手洗いに行ってくるわ」「ちょっと頭を冷やしてくる」など、その場を離れて1回インターバルを置くことで、大げんかに発展するのを避けることができる。
グラウンディング

グラウンディング
自分の目の前の物や身の回りの物にぐっと集中して、しっかり観察する。怒っている事実から、意識を周りの物に移動させる。例:目に付く数字に意識を向けてクールダウンをはかる
2

べきの三重丸

べきの三重丸

べきの三重丸
①自分と同じ「べき」
②自分の「べき」と少し違うが許容範囲
③自分とは異なる許容できない「べき」
※②のふちは機嫌の良し悪しや疲れの状態で大きくなったり小さくなったりしている
©(一社)日本アンガーマネジメント協会

「べき」が重要なキーワード

 アンガーマネジメントでは、「べき」が重要なキーワードです。なぜ人が怒るかというと、「○○すべきだよね」という「べき」があるからです。「べきの三重丸」の図を見てみてください。相手も同じ「べき」を持っている丸が①。ちょっと「べき」が違うけどOKという丸が②。②だったら怒る必要がありません。③は「それは違う」という丸。

 ②の丸のフチが小さいと、許せないことが多くなってしまいます。「いろいろな人がいるよね」と思うだけでも、少し広がります。そして②を広げたら安定させることが大切です。もし相手の言動が③だった場合、「それは違う」という態度を見せましょう。「ここまでは許せるけど、これ以上はダメ」と境界線を見せていれば、相手が「ここまではいいんだ」と分かってくれます。

 ポイントは、人と自分では異なる「べき」があり、世の中にはさまざまな「べき」があることを知ること、大きくしたら安定させること、境界線を相手に見せていくことーの3つです。

3

思い込みの分かれ道

思い込みの分かれ道
怒りの原因を「変えられるもの」と「変えられないもの」に振り分ける。
変えられるもので自分が伝えるべきと思ったものは、いつ、どのように伝えるか、どこまで求めるかを冷静に考えて相手に伝える。
 

その怒りの原因は変えられること?

 このようにクールダウンしたところで、どうするかを考えます。その最後のステップを「思い込みの分かれ道」と呼んでいます。ここでは、怒りの原因を「変えられるもの」と、「変えられないもの」に振り分けてみてください。

 交通渋滞など変えられないものにイライラして自分の感情が巻き込まれてしまっているなら、それは無駄なことです。まず自分を冷静にして、正当な理由があって怒った方がよければ、上手に相手に伝えます。しかし、それほどのことでなければ、さっさと忘れて次のことに移った方がよいのです。

イメージイラスト

自分の心のコップをイメージしてみよう。
もうすぐいっぱいになりそうだったら、
あふれる前に対処を。

心のコップの水、今どれくらいたまっていますか

 つらい、苦しいなどの感情がたまっていっている心のコップをイメージしてみましょう。中にたまっている水は第1次感情です。水がいっぱいになっている人はちょっとのことでもワッとあふれ出してしまい、怒りという第2次感情になります。

 コップの中に水があまりたまっていなければ、同じ事柄でも怒りは生じません。リラックスする時間を設けるなど、日々コップの中の水をこぼしていく作業が必要です。また、もともとコップが小さければすぐにあふれてしまうので、少々のことであふれないように自分の心のコップを少しでも大きくすることを心掛けましょう。

 先に紹介した6秒ルールはとても簡単ですが、毎回実践できるとは限りません。「あ~忘れていた、またやってしまった」と後悔するかもしれませんが、それでいいのです。怒りのピーク時に放った言葉では、本当に言いたいことが伝わらないことが多いものです。6秒ルールを思い出し、いろいろ試してみて自分に向いているテクニックを選んでください。

 怒りの感情に良い悪いはありませんが、4つの傾向があるなら問題です(下表)。無駄にイライラしたり、不要なことで怒らないためにも、自分のイライラや怒りを自覚することが大切ですね。

問題になる怒りとは

あなたにこの傾向があったら要注意

①強さ
必要以上に怒ってしまう人。怒っているか怒っていないかのどちらか。OKかダメのどちらかの人。こういう人は、人間関係を壊してしまう。自分が怒られたときはもろく、逆ギレする。
【対処法】怒りを点数化する。怒りにはボルテージがあることを知るのが大切。
②持続性
根に持つ人。思い出して怒る人。何回も何回も思い出す人は、自らを興奮状態に置いている。あまり長く続くと、憎しみや恨みに発展してしまう。
【対処法】身体的にリラックスタイムを持つ。その都度怒りを消化する。コップの水をこぼす努力をする。
③頻度
頻繁にイライラする人。余計なエネルギーを使ってしまうので、自分の時間がもったいない。
【対処法】心のコップや三重丸を思い出す。怒る必要のあることだけに怒るようにする。自分のコップを大きくする努力も必要。
④攻撃性
人にあたる、物にあたる、自分を必要以上に責める人。自分に怒りの矛先を向ける人。
【対処法】「人を傷つけない」「物にあたらない」「自分を責めない」を唱える。

読者からの怒りエピソード

イメージイラスト

私は職場に毎日お弁当を持参しています。 お昼休みになると食堂に集まって皆でお弁当を広げるのですが、いつも私や他人のお弁当の中味を食いいるように眺めては 「いつもそのおかずばかりじゃなー。飽きんのん?」と言ってくる人がいます。 自分だって毎日冷凍食品のくせに本当に腹が立ちます! 心の中でとどめておけばいいものの、わざわざ口に出して言うので怒る寸前です。(39歳女性)

玄関先にある大きめの植木鉢に、よく犬の糞が入っています。飼い犬だろうと思われます。飼い主のことを考えるだけでムカムカします。(43歳女性)

あなたがイライラするものは何ですか

(回答数408人)

第1位
交通渋滞………………………163人
第2位
順番待ちの行列………………147人
第3位
歩きタバコ……………………143人
第4位
公共交通機関の遅延…………116人
第5位
酔っ払い………………………83人
第6位
満員電車…………………………66人
第7位
赤ちゃんの泣き声………………64人
第8位
仕事や仕事上の人間関係………34人
第9位
夫婦・親子家族関係……………27人
第10位
おじさんのギャグ………………19人

※選択肢また自由回答にて複数回答可(日本アンガーマネジメント協会調べ)

「リビングおかやま」「リビングくらしき」2015年12月5日号掲載

ページトップ