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3人の〝聞き手〟にインタビュー〝聞き上手〟になるための極意とは〝自分〟じゃなく〝相手〟


新生活で環境が変わり、コミュニケーションを取ることが増えたという人も多いのでは。「聞く」プロに話を伺いました。

3人の〝聞き手〟にインタビュー〝聞き上手〟になるための極意とは〝自分〟じゃなく〝相手〟

 新生活で環境が変わり、コミュニケーションを取ることが増えたという人も多いのでは。真のコミュニケーション上手は聞き上手―。でもやみくもに話を聞くだけではいけません。どんなポイントに気を付ければよいのでしょうか。話を「聞く」プロの3人に話を伺いました。

牛嶋俊明さん

牛嶋 俊明 さん
平成2年からラジオアナウンサーとして活躍し、FM岡山は19年目。
「牛嶋俊明ドリームファクトリー」(金曜13:30~)など3本のレギュラーを持つ

〝聞く〟に徹することで相手が分かる

 FM岡山でパーソナリティーとして活躍している牛嶋俊明さん。「話す」イメージが強い職業ですが、実は「聞く」ことをとても大切にしているのだそう。

 「インタビューでも相手の話をちゃんと聞かないと次の質問ができません。相手のことを知らない時ほど〝聞く〟に徹します。新人の頃は〝次は何を話そう〟と自分が話すことばかり考えて聞くことに集中できませんでした。でも、話の振り方次第で相手がどんどん話してくれることが分かってきたんです。例えば岡山駅前を散策しましたと言われ、〝そうなんですか〟と話を終わらせることもできますが、〝何か面白いものを見つけましたか〟と一言加えれば話が広がっていきます」と牛嶋さん。しっかり聞くことに意識を向けていると相手への関心が湧き、合いの手の質問の質も自然と濃くなると言います。

相手の様子を察しながら雰囲気をつくる

 「番組のゲストにも話し上手な人、話し下手な人、さっきまで冗舌だったのに緊張して無口になってしまう人…とさまざまな方がいるので、一辺倒にこのやり方がいいというものはないと思います。同じ空間で同じ空気を吸っているからこそ相手の様子を察し、〝何を言っても大丈夫ですよ〟という雰囲気づくりを率先して行い、声のトーンや笑顔にも気を使っています」とも。

 また、「ラジオは自分が聞き手になり、その話をリスナーが聞くという2重構造。難しい内容はかみ砕き、わかりやすい言葉に言い換えるなど、皆が理解できるよう心掛けています。日常生活にも役立っていて、例えば相手が自分と違う意見の時ほど、相手の話を聞くことに集中することなどもラジオの仕事を通じて備わったと思います」

武井祐子教授

武井 祐子 教授
川崎医療福祉大学医療福祉学部臨床心理学科。
臨床心理士として同大学附属心理教育相談室、川崎医科大学附属病院臨床心理センターでも活躍中

相手との信頼関係を築くこと

 心理学の専門家はどのようなことを心掛けているのでしょうか。

 「カウンセリングの現場で一番大切なのは、テクニック以前に相手との信頼関係を築くこと」とは、川崎医療福祉大学の武井祐子教授。例えば、相手の話が終わっていないのに自分が話し始めて意見を主張したり、内容を否定・評価したり…。こんなこと、やっていませんか。

 「話を聞きながらさまざまな感情が湧き、すぐ相手に伝えたくなるのは人間にとって自然なこと。しかし、これを繰り返すと、聞き手の顔色をうかがい、本心で話してくれなくなります。まずは本人の話をありのまま受け止めてあげることが大切。カウンセラーはクライアントである話し手が自分の考えを整理し、自身の力で問題解決に向け前進できるよう寄り添っていくのが役目なので、自分の意見を言うことはあまりありません」とのこと。

価値観を押し付けない

 また、「親子などの濃い関係ほど相手に〝こうあってほしい〟という感情や、人生経験の差から話を聞くより先に自分の考えや価値観を押しつけてしまいがち。話し手本人は大変だと思うことも〝大丈夫だ〟と捉えてしまい、励ましたつもりが、〝この人には分かってもらえない〟と話をしてくれなくなることもあります。まずは事実、本人の気持ちを聞いて受け止め、話を聞いてもらえたという安心感を持たせてあげることです。子どもは自分の考えをまとめるのがまだ上手ではありません。焦らず、〝それってこういう意味かな〟と確認をしながら、その上で〝私だったらこう思うよ〟などの意見を述べてはどうでしょうか」とも。

環境や仕草も意識

 話をする環境も大きく影響し、食事やお風呂などリラックスしている時間は会話が発展しやすいのだそう。「真正面より隣同士、斜めの席で話す方が心理的に圧迫もされません。時計を見たり、足を組む、手悪さをするという仕草も、ちゃんと話を聞いていないというメッセージになるので、テクニック以外にもこのようなことを意識しておくとよいかもしれません」

篠原真祐さん

篠原 真祐 さん
臨済宗・蔭凉寺(岡山市北区中央町)住職。
葬儀中心の仏教活動だけでなく、「豊かな心を創る」をテーマに多方面で活躍中

心と心で会話する

 老若男女と話す機会が多いお寺の住職。蔭凉(いんりょう)寺の篠原真祐住職の元には檀家さんのほか、知らない人が悩み事を打ち明けにやって来ることも多々。時には、保護司(※)として犯罪や非行を犯し、現在更生に努めている人とも話をすることがあるのだそう。

※法務省の管轄で、犯罪や非行をした人たちと定期的に面接を行い、更生を図るための約束事(遵守事項)を守るよう指導。生活上の助言や就労の手助けなどを行う人

 「相手の素質や能力に応じて適切に教えを説く対機説法で、僧侶と相談者ではなく、相手が老人なら私も老人の心になります。人は皆、たとえ罪人であろうと〝仏心〟を持ち、善人といわれる人も〝邪念〟を持っています。肩書きなど表面的なことではなく、心と心で会話をし、自分自身も会話を楽しんでいます。アドバイスしてあげよう、更生させようなんて気張った心はありません。たわいもない話でもいいのでまずは相手の話に耳を傾け、気持ちに寄り添うこと。すると相手がどんどん心を開いて話をしてくれ、立ち直り、元気になっていくのが分かります」と篠原住職。

年を重ねるごとに自然体で聞けるように

 今年53歳。「20~30代の自分が同じように話が聞けたかというと、そうではないと思います。修行や人生経験を重ねる中で寛容さや臨機応変に対応する力がついてきて、自然体で相手の話が聞けるようになってきました。そう思うと、年を重ねることはいいことだなと感じます」と話します。

正しい事実が救いになるかは分からない

 昔、子を亡くした母親が悲しみに暮れる中、釈尊の所へ行けば生き返らせてくれると聞き、喜んで向かいました。釈尊から「生き返らせてあげましょう。それには今まで死者が出たことがない家から芥子の種をもらってきなさい」と言われた母親は、町中の家を訪ねます。どの家も芥子の種はありますが死者を出したことのない家など一軒もありません。そこで母親は誰にでも死はやって来る、不幸なのは自分だけではないことを悟ったという話があります。

 「死んだ人を生き返らせることができないのは事実。でも釈尊は初めからその事実を告げて相手を突き返すことはしませんでした。私もすべてを受け入れてあげ、話し手自身が気付けるよう導いていければと思います」

編集後記

 仕事でもプライベートでも話を聞く場面がたくさんあります。自分の行動を振り返ってみても、相手が話し始めた端から「分かる分かる!私もね~」と自分の話にすり替えたり、相手の言うことをすぐに否定したり、はたまた、最後まで話を聞かずに早合点した言動を取り、相手に〝そういうことじゃないんだけどな…〟と言われたり。相手に寄り添っているつもりが、いかに自分本位で話を聞いていることかと反省しきり。どんな時も相手の心に目を向けて、聞き上手を目指します(М・H)

「リビングおかやま」「リビングくらしき」2018年5月12日号掲載

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