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「物忘れ」と「認知症」の違いを知ろう!


「物忘れ」と「認知症」の違いを知ろう!
早めの気づき、治療、見守りで本人も家族も幸せに

「物忘れ」と「認知症」の違いを知ろう!早めの気づき、治療、見守りで本人も家族も幸せに

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認知症にはなりたくないし、身近な人になってほしくない…。それは、だれもが願うことですよね。しかし、「最近忘れっぽくなっている気がする」と不安を感じている家族のために、認知症を心配すべき状態と、そうでない場合の違い、その後の対応について認知症に詳しい岡山大学病院神経内科長の阿部康二先生に伺いました。

イラスト=熊猫手作業社

阿部 康二さん

お話をしてくれたのは…

岡山大学病院 阿部 康二さん

岡山大学病院
神経内科学教授/内科学会認定内科指導医/内科学会認定医/神経学会理事・専門医/脳卒中学会幹事・専門医/認知症学会専門医/日本脳血管・認知症学会理事長/世界脳循環代謝学会理事長(2009~2011年)

知症ってどんな病気?

一度成長発達した知能が低下してしまう状態

認知症は、一度正常に脳が成長発達してから後に、加齢や病気など何らかの原因で知能低下が起きる状態。記憶力や理解力といった知的な能力の低下や、その場の状況がうまく認識できないことでの感情表現の変化があり、さらにそれによって日常生活の中でトラブルを起こしてしまうようになります。

認知症は、記憶障害が主症状の「アルツハイマー型」が最も多く、全体の6割を占めます。次いで、脳血管障害による「脳血管症」「レビー小体型」「前頭側頭型」などがあります。

忘れと認知症はどう違う?

忘れた自覚があれば物忘れ 自覚がなければ認知症の疑い

記憶する能力は、20代をピークに加齢とともに減退していきます。そして多くの人は60歳ごろになると記憶力に加えて判断力・適応力などに衰えがみられるようになり、知能の老化が始まります。記憶力の老化が進行し物忘れが次第に多くなるのもこの時期ですが、この物忘れは加齢に伴う自然なもの。認知症ではない物忘れは、例えば「朝ご飯に何を食べたかとっさに思い出せない」など。食事をしたことは覚えていて、何を食べたか忘れていることを自覚している状態です。

一方、認知症の症状による物忘れは、「朝ご飯を食べたこと自体」を忘れている状態です。体験自体を喪失しているので、日常生活に支障をきたし、周囲の手助けが必要となります。

う見守ったらいい?

阿部先生のチェックシート

阿部先生のチェックシート
大きな画像はこちら

症状を定期的にチェックして記録
治療方針の決定に役立てて

「阿部式BPSDスコア(Abe’s BPSD score:ABS)」を使って1~3カ月ごとに症状を記録しましょう。認知症の進行による脳組織の変化や体調不良、環境や人間関係の変化など、さまざまな要因で現れる周辺症状(BPSD)をチェックするのに有効です。

定期的にチェックすることで、病院での診察時や治療方針を決める際に役立ちます。ぜひコピーして、家族の見守りに活用を。

行を緩やかにできる?

進行を遅らせる薬の服用や原因となる疾患の治療が可能

最も頻度の高いアルツハイマー型認知症は、現在ではまだ治すことはできません。しかし、進行を遅らせ、症状を軽くすることができる薬が4種類ほどあり、症状に合わせて服用します。

また、認知症の原因となっている疾患を治療することも可能。ただし、進行してしまってからでは、治療してもなかなか効果が期待できないのが現状です。本人の苦痛はもちろんのこと、家族の負担も大きくなってしまうため、早めに気付き、治療をスタートさせ、症状の変化を見守ることが大切です。家族の様子に違和感を感じたら、専門医の診察を受けるよう提案しましょう。

認知症の症状は?
中核症状
※脳の神経細胞が壊れることによって直接起こる症状
記憶障害 新しいことが覚えられない、記憶していたことを思い出せない。
見当職(けんとうしき)
障害
現在の年月や時刻、自分がどこにいるかがわからない。
理解・判断力の障害 考えるスピードが遅くなり、2つ以上のことが重なると処理が難しくなるなど。
実行機能障害 計画を立て按配することができなくなる。
感情表現の変化 その場の状況を読めなくなる。
周辺症状 認知症の進行による脳組織の変化や体調不良、環境や人間関係の変化など、さまざまな要因で現れる症状。怒りっぽくなって暴言を吐く、暴力や被害妄想、徘徊(はいかい)、介護拒否など。

族が認知症と診断されたら?

元気だった時代の姿を求めず寛容に受け止めて

阿部先生のチェックシート

治療と同じくらい重要な役割を果たすのが、普段の生活の中での家族の対応です。認知症の症状は、かかわり方によって大きく変わります。認知症になってしまった人に対して健康で元気だった時代の姿を求めず、疾患による言動だと理解して、寛容に受け止めてください。

また、見守りや介護が容易でなくなってしまった場合は、デイケアやショートステイなどのサービスも活用しましょう。家族が自分の時間をもつことができるだけでなく、本人がプロの介護を受けたり、社会に接する機会にもなります。

めたくない心にどう対処する?

本人の意思を尊重しながら受診やサービス利用の提案を

家族は明らかに認知症だと思っていても、本人が自分で気づくことは難しく、プライドが病気を受け入れられないケースも多くあります。特に、職場などで活躍してきた男性は自尊心が強く、認めたがらない傾向。しかし、認知症を放置してしまえば、日常生活にトラブルが多発し、自分らしく生きることができなくなってしまいます。

「体のことも心配だから、検診に行ってみよう」「せっかく保険料を払っているのだからデイサービスを利用してみたら」など、やんわりと専門医の診察を促したり、介護サービスを利用する提案をしましょう。このとき一番重要なのは、相手の気持ちを尊重する姿勢です。

こに相談したらいい?

市民講座などで正しく理解し、コールセンターなどに電話を

認知症になると、それまで当り前にできていたことが難しくなります。初めてそのような状況に出合い、見守り、手助けする家族は大変です。認知症の基礎知識を学べる市民講座などを受講して正しく理解し、第三者のサポートを受けたりしながら、ゆとりある気持ちで対応してください。岡山県では、認知症の人や家族の相談に認知症介護の専門家や介護の経験者が対応するコールセンターを設置しています。また、認知症疾患医療センターもぜひ活用してください。

おかやま認知症コールセンター

TEL.086-801-4165
月曜~金曜日10:00~16:00受け付け(祝日・8月13日~8月15日・12月29日~1月3日を除く)
相談/無料(通話料は相談者負担) ※秘密は厳守されます
実施機関/公益社団法人「認知症の人と家族の会」岡山県支部

認知症疾患医療センター
病院名 (住所) 受け付け 相談窓口電話番号
岡山大学病院 (岡山市北区鹿田町) 月~金曜 8:30~17:15 TEL.086-235-7744
慈圭病院 生活福祉支援室
(岡山市南区浦安本町)
月~金曜 8:30~17:30
※土曜の受け付けも相談可能
TEL.086-262-1191
川崎医科大学付属病院
患者診療支援センター (倉敷市松島)
月~金曜 8:30~17:00
※土曜は12:30まで
TEL.086-464-0661
倉敷平成病院 (倉敷市老松町) 月~金曜 8:30~17:00
※土曜は12:00まで
TEL.086-427-3535

「リビングおかやま」「リビングくらしき」2015年6月6日号掲載

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